第17話
「僕、罪車って初めて乗る」
「リイが乗ったことあったらそりゃびっくりだわ。ていうかこの車はあんたらみたいな心の綺麗なやつが乗っても何もおきやしないよ。」
陽の言葉に豊はびくっと跳ねた。
僕はあの大きな木の中で住んでいる時、色々なことをやった。隣町のゴミをあさるのは盗みに入るだろうか?歩いている人に媚び売って何か物をもらう行為はどうだろう?
「リイ、あっ俺も豊って呼んだが良いか、何しょうもないこと考えてんだ?」
陽は皺の入った手の平で豊の頭を撫でる。
「上のもんはお前の行動全部見てるよ。お前は徳はあっても罪はねーよ。罪車の罪はそんな小さなもんじゃねーんだ。あっ今から向かう場所決まったぞ」
陽は嬉しそうに後ろを振り返る。
「何かヤスさん性格まで前以上に陽気になったな」
陽の笑顔に驚きが隠せない境であった。
「そうか?それより境、お前、裁判所にも顔きいたよな? 」
陽の言っている意味がくみ取れず陽を見つめ返す境。境にはこの罪車は小さいのか天井に頭が付いてしまい窮屈そうに見えた。
「よし、まずは境、例の作業場の近く行ってその後、闇が捕まってるところの裁判所だ」
陽の言葉に境は目を見開く。
「ヤスさん、あそこは例の奴らのたまり場なんだぞ。あそこにこの子達を連れて行くのかい? 子供の教育上に悪いよ」
例の作業所とは境の働き口の一つ、靴やテーブルあらゆる物を手作りで作る工場だ。
最近、その工場の二つ横の路地に変な薬を売って人を騙しお金儲けをしているおかしなグループがたむろっていた。
「陽さん、僕が何とかしなくちゃいけないんだけど、まだまだ僕は未熟で」
豊が申し訳なさそうに答える。
「その為に俺らがサポートにつけられたんだ。今まで辛い思いさせてごめんな」
陽が豊に目線を合わせ皺くちゃな顔で笑う。眼球が緑の所は昔と変わっていない様だ。
「まあこんなおいぼれになっちまったがまだまだ役に立つぜ。闇とも連絡を取り合う能力があるから、今、闇がどういう状況かも聞けるんだ。闇も記憶は戻ってたぞ。闇が言うには、豊は知ってるか知らないが、今回と言ってももう闇が捕まって三年経っちまったか、もちろん闇は無実だ。闇のその当時の職場は、豊が居た所の隣町にある大きな洋館で庭師だったんだがそこの息子がした盗みを闇の所為にされたのさ。息子自身は、度胸試しでやったのか知らねーが、闇は豊が居た裏通りに住んでいたというだけで罪が重くなった。そんでだ、今その息子、例の作業場の横の路地辺りでたむろっている奴のボス的存在になってるみてーでな」
陽はゆっくり車を発進させながらそう語った。
『なるほどなるほど、それでまずそこに向かってどうするつもりですか?』
ヌイの言葉に陽は悪そうな顔で笑った。
「まあ自分の罪は自分で償わなきゃな。今回お仕置きも込めて荒療治を考えてるんだ」
道中歩いている人は多いが車は見当たらない。道も舗装がされておらず車内もガタガタと揺れていた。
「ココは役所が見放した場所でもあるから道路も何もかも整ってねー。俺の仕事で土地の調査って言うのがあるんだが、まあ、ひでーもんだ。それを目の当たりにしても役所は動かねーしな」
境が眉間にしわを寄せながら呟いた頃、罪車は作業場に到着した。
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