第16話
生き物は死んだ後、天界から迎えが来る。
罪が、ある一定値より少ない人や徳を積んでいる人は三途の川より天国か転生の泉に連れて行かれる。
その時は大きな渡り船で行く。
しかし、それ以外の罪の重い者が罪車と言うものに乗せられる。
罪車に乗った者は罪車の中で罪を償うまで永遠に夢を見る。
反省するまで自分の罪の重さを自覚する為、してしまったこと以上の辛い相手側の思いを体感させられ、それから逃げたり反省の色がみられなければ何度でも、何度でも夢を見させられる。
悪夢を見るだけかと思うだろう。
しかし感覚匂いは何もかもが生きている時と同じである。
まさに無限地獄なのだ。
罪車と聞き、ヌイが慌てた様子で口をはさんできた。
『あなたは陽氏でしたか、しかし罪車なんて、そんな重要なもの、後で始末書だけでは済まされませんよ、良く持ち出せましたね』
知り合いと分かり安心したのかヌイはヤスに向かって堂々と話し、呆れた様な声をあげた。
「今回、地獄の方の手違いでリイ坊をえらい目に合わせちまったからな、まあそれを乗り越えて一人前なんだが、それに閻魔様のはからいでもあるのよ。このままこの星が潰れるのも具合が悪いんだそうだ」
そう答えたヤス改め陽は能力が戻ったからか肌がつやつやしていた。
話に置いてきぼりにされている他の三人もようやく内容を理解し、ヤスの乗って来た、その見た目は普通だが不気味な車、そんなものに乗るのかと少し不安を覚えていた。
ナリは未羅の胸で暢気に昼寝をしていた。
未羅もナリを新しい家族として受け入れたようでちょっと大きい狐のような生き物を必死で抱え寝息を立てる様子を優しく見つめていた。
「寝ているのに術はかけれるの? 」
未羅がナリは眠っているのにちゃんと術が村の人にかかっている事が不思議でヌイに尋ねた。
『寝てないですよ、半分寝ているといった感じでしょうか? 石神は常に主人を守ることを義務とされています。寝ていても意識はあるのですよ。だから悪口言っても聞こえますよ』
ヌイの言葉にナリの耳がピクリと動いたが寝息は立てたままである。
『村民全体に術をかけた為、ナリも疲れたのでしょう。封印が解けて間もないですしね。石神は主人と一緒に成長する為、主人の能力以上の働きをすると必要以上に疲れるのですよ』
「もしかして私の所為で疲れてるの? 」
ヌイの言い分にちょっと不安そうな顔をした未羅は、そう言い優しくナリを撫でた。
『リイ様じゃなかった豊様には悪いですが向こうにいた時より楽しそうですよ、ナリは』
ヌイの言葉に安心し、照れたように笑う未羅であった。
「早く乗ってくれや、もう未羅ちゃんとナリとヌイだけだぞ」
ヤスの言葉にナリを抱えた未羅が後ろ座席に乗り込み、窓の開いていた豊の乗っている助手席にヌイが窓から飛び乗った。
外から見た車内はおどろおどろしく黒い配色に枯れ木が絡みついたような見かけだった様に見えたのだが錯覚だったのか、実際乗ってみたら普通の車と同じ小ざっぱりとしていて豊は安心して座席に背を沈ませた。
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