第14話
『お久しぶりですなー、リイ様』
狐のようなものもそう声を発した。
「ナリも元気だったか? 」
豊は狐のようなものをナリと呼びそっとナリに触れようとするが、ナリは豊と距離を開ける。
『私もリイ様の狐神になる予定だったのですが、私のご主人様は今現在、こちらのお嬢さんに変わってしまいました。なので、私もこのお嬢さんが一緒でないとご一緒できません』
そうナリは目を見開いて言い切った。
『申し訳ありません。リイ様、ナリは未羅様に恋をしているのです』
ヌイが豊の耳元でそう告げる。
ヌイの言葉に一緒に行くしかないかと苦笑いをこぼす豊であった。
「この流れは俺の涙も必要だろうか?」
困った顔で境は言った。
『いや、私達石神は石のままでも通信しあえるのだが赤い石の石神である蛇神は弱ってしまっていて貴方の涙やリイ様の呪文だけでは封印は解けない様だ』
そうヌイが告げた。
「さっきから気になっていたんだがリイっていうのが豊の本当の名前なんだな。そう呼んだ方が良いか? 」
境が悲しそうに豊に語りかけた。
「リイは今の僕じゃない。僕の名前は豊だよ。」
そう言い豊は境に笑いかけ、照れ隠しに自分の頬をかいた。
「話を戻すけどデビの封印はどうして解けないの? 何で弱っているの? 」
豊の疑問にナリの耳がピクリと動いた。
『それは私が説明しましょう。境さんとやらはこう見えてとても優しい。私達石神はそれぞれ能力がある。リイ様、私達も豊様と呼んだ方が良いですかな? が言っていたデビと言う名は蛇神の事。蛇神の能力は悪い心を吸い取る能力を持っていて今回の任務には必要不可欠。だがしかし、その悪い心が蛇神には食料の様にもなっていたのでな、境さんがずっと持っていたことで心の優しい境さんは悪い心がなく、デビは食料がない状況になってしまった。しかしデビは境さんの元を離れる事を嫌がった。死ぬかもしれない状況にありながら境さんの元は居心地が良かったのであろうな』
そう言いながらナリは豊の隣に腰かけ足を組んだ。
見かけは狐なのに座位がとれておりなんとも奇妙な光景だった。
「ええとナリちゃん、じゃーまずどうすればいいの? 私達は何処で何をすべきなの?」
未羅から初めて名前を呼ばれ鼻の下が伸びかかったナリだったが豊と目が合い瞬時にいつもの表情に顔を戻す。
『ええと未羅様と呼ばせてもらっても良いですかな』
少し照れながらナリは未羅に尋ねた。少々顔が赤い様だ。
「様何て、未羅でも未羅ちゃんでもなんでも呼んでよ」
ナリに向かってウインクをする未羅は豊と年齢が変わらないはずなのにナリにはとても魅力的に映った。
『いえ、では未羅様と呼ばせて頂きます。あと、ええと豊様まずはデビの封印を解くことが必要です』
ナリは恥ずかしさを隠すよう未羅から目を背け豊と目線を合わせる。
「ごめん、ナリ、ヌイ、僕には何処にまず行ったら良いか分からないよ」
豊はどうしたらいいか分からず項垂れていたが豊の膝に乗っているヌイがペロリと豊の頬を舐めた。
『リイ様、いえ豊様、だから僕達が居るんでしょ? まずは豊様の前の居住地だった場所の隣町の監獄に無期懲役で捕まっている闇氏の所に行きましょう』
優しい眼で豊を見つめヌイが言った。
「闇氏ってもしかして闇さんの事? 」
闇の事はずっと豊も心残りであった。他のホームレスから無罪だと聞かされ余計にやるせない気持ちでいっぱいだった。だけどあの時の何の力もない豊かにはどうする事もできなかったのだ。
『そうです、さっき封印書から話を聞いたとは思いますが、一緒に下ろされた閻魔様の甥が闇氏なのです。本人記憶は無いですが。私とナリの封印が解けた今、闇氏の記憶も戻っているのではないかと思われます。闇氏は今やかなりの高齢です。能力はあってもここに来ることは難しいでしょう。手元に我々が居ないので能力は使えませんしね。私達が闇氏の元に行くのです。何故ならこんなに弱ってしまったデビの封印を解くことが出来るのは今や闇氏だけなのです』
ヌイの話を聞き、闇さんをやっと助ける事が出来ると豊の胸は熱くなった。
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