第11話
ココは何処だろう。
目の前には見覚えのある大人が二人。
皆プカプカと浮かんでいるが、夢の中なのか現実なのか実感のないその中での自分は、その光景を当たり前の様に思っている様だった。
僕はこの人達を知っている。
ココは正確には僕が生まれる前の記憶だ。
この空間での僕は実際の僕より十歳以上は年上の姿をしている。
変な感じだ。
目の前で繰り返されているのは生まれる前の僕の体験の筈がまるでDVDの様に他人事みたいだ。
目の前の二人はそう僕の本当の両親だ。
ココは天界。
僕はそこの落ちこぼれ。
両親が言うには僕は優しすぎる所が欠点との事だ。
両親は僕を一人前にするためにあの地上に下ろしたんだ。
天使の力を秘めている人間として生まれ変わったんだ。
能力値の低い僕を心配して優しい所が長所であり短所でもある僕に合わせられた様な封印書、天使の書と言う封印書と一緒に。
映画みたいに自分を含め両親がドラマの様に話している。
自分の口からも勝手に言葉が出ている。
「リイ、お前は本当にこの星が良いのだな」
そう言葉を発しているのは豊の前世での父、豊の前世での名はリイという。
「はい、父上、この星では様々なことが問題となっている、貧富の差、紛争、災害、人身売買、異常気象、人口減少、細かく見ていくと医療格差、発展途上の女子の教育が受けられていない事や自分らしく生きられない性別による差別、ストレスによる精神悪化からの社会阻害、その他にもいろいろな問題が隠されている」
さらにたたみかける様に豊の前世であるリイはしゃべり続けた。
「僕はココで能力を発揮できず周りから冷たい視線を受けていた僕だから気持ちも分かるし、この星を救いたいんだ。それに問題以外の場所も見てよ。この美しい自然、美しい心も持っている者も多くいる」
豊は自分が喋っているのを聞きながら今の記憶と照合していた。
「だけどリイ、大変ですよ」
豊に告げながら考え込んでいるのは母だ。
この時のリイの決意は固かった。
心配したリイをその場に残し二人で両親が何かをこそこそとしゃべっている。
二人は自分の子供だけではこの星を救う大役は無理だ。
フォローする人物や道具が必要だと話していた。
どうしてリイの前で喋っていない事も自分に聞こえるのだろう?
自分の前世の記憶ならば自分が体験していない事は分からない筈だ。
そう豊は不思議に思っていた。
映像を見ながら考え込んでいた豊かだったがその時心に声が届いた。
『これはワシの記憶じゃ』
何?何が喋っているの?
『ワシじゃ本とでも言おうか、ワシの名は天使の書。ワシの記憶をお前に見せておるのじゃ』
本?本って一緒に下ろすと言われていたあの封印書の事?
『そうじゃ、しかも正確にはお前と一緒には下ろされておらん。過保護の両親がお前一人では心配での』
天使の書の声は豊の心に喋りかけている様だが何だか懐かしく声を聴いているだけで温かくなる気がした。
『閻魔様の甥が調度フラフラしとったから一緒について行かせる事を考えたんじゃ、ワシの事も甥に預けたみたいじゃ、だけど何か恥ずかしい話なんじゃが、天界と閻魔様がおられる地獄の境目とまですぐ行き来が出来る距離ではない』
そう天使の書は言った後、ちょっと苦笑いをした。
『しかも天界も地獄界もその時すさまじい忙しさで、封印書の渡しはそれ専用の転送機がありそれに手紙を添えて送ったのじゃが、どうも手違いがあってな。天界と地獄界では年号の言い方が違い閻魔様が間違うてのう。下す時期が八十年程ズレてしまった様じゃ』
天使の書も自分の役目が果たせずこの世界が朽ちて行くのを只見ていたのは辛かったと言い、さらに話を続けた。
『肝心な甥は、ワシの封印を解ける前に地上であった災害に巻き込まれて記憶も失くし、封印書自体の意味も前世の記憶も忘れてしまった様じゃ』
天使の書は豊の頭のペースに合わせてゆっくりと話す。
『心のどこかで大事なものという事は覚えていた様でな、ずっと持ってはくれている様じゃったが』
そこから少し沈黙が流れ天使の書が大きなため息をついた。
豊は自分は怒ってなどいないと誰も悪くないと心で天使の書に話しかけ続きを聞いた。
『肝心な封印をされている石神様達なんじゃがな。記憶をなくした災害の時に、封印書から外れて無くしてしまった様じゃ。石神様と言っても封印中の身。普段は石の姿じゃ。まあ力は使えないが、石神様達もたまに地上で動きたくなり、元に戻ったりしていた様じゃが。しかしすべての石神達が集まりお前の元でではないと封印は解けん。そうして降りてきたお前に苦労させる事になってしまったんじゃ。しかもお前が下りた時、時代も進んでしまっていて星の状況も悪化してしまっていてな』
それから豊は天使の書から様々な説明を受けた。
豊の持っていた石は青色石で狗神様が入っている。
未羅がもっていた黄色石は狐神様が、そして境が持っていた赤色石は蛇神様が封印されていると。
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