5話:おじさんと野盗

 うーむ。

 やはり、低脳スライムごとき頼ってみても意味がなかったか~。

 ま、ここはがこの星っつーか、この異世界ちっくなところでどの程度の力を持っているか、テストしてみるのが丁度いいかな?

 テストプレイ、というより、チュートリアルみたいな感覚で、やってみましょい!


「くぉーらっ!人間のオスどもっ!じきじきに相手してるから、覚悟しちゃいなYo!」


 ――とはったものの、どうやって戦えばいいの?

 ひのきの棒を背負ってきてはいるものの、これ使って撲殺ぼくさつとか、大魔王っぽくなさすぎる。

 困った時には、そう、攻略本!

 ちょっと見てみよう!


「なんだとォ、このアマッ!」

「なに、本なんか読んでんだ!」

「あっ!呪文の書か?」

「魔術師かも知れん!マズイぞ、やっちまえ!」

「ヒャッハー!」


 一斉におどり掛かってくる野盗ども。


「えっ!?ちょっ、ちょっと待って!今、解説ページ、読んでるんだからぁ~」


 ――アレ?

 襲い掛かってくる野盗たちの動きがスローリー。

 やたら、遅いぞ?

 おおっ!分かったぞぃ。

 さすがは、チュートリアル!最初の敵は、くっそ弱い!コレ、お約束ぅ~♪

 スローモーな攻撃をのらりくらりとかわしながら、攻略本の戦闘項の解説を読んじゃいましょう。


 なになに?

 VR変身ベルトにスマホをセット中、つまり、“うきうきデカパイ大魔王モード”の時は~……あー、この爆乳大魔王美少女VTuberのキャラをまとってる時って、うきうきデカパイ大魔王モードっていうのか、知らんかったぞぃ。

 ……もう少し、マシなネーミング、なかったんかい?

 それはさておき……

 この大魔王モードの時は、スマホ画面にタッチするとエレクトリカル・マジカル・インターフェースってのがホログラムとして周囲に展開される、と。

 ――なるひょど。

 では、ぽちっとな!

 ぶおん――

 おおっ!出たでた!前面どころか、俺を、いや、を取り囲む感じでホログラムのコンソールが出現しとる。こりゃ、便利!

 すると~……モーションキャプチャ機能で自動的にナイスバディをコントロールすることができる、と。併用へいようしてグラフィックを直接、タップやフリックすればより細かい操作が可能。

 よし!試してみよう。

 グラのおっぱい部分をピンチアウトして拡大しつつ、フリック!

 さあ、どーなる?


 大魔王パカちゃんさまの右おっぱいが急に巨大化したかと思うと、凄まじい勢いで伸び、野盗の一人をブンなぐる。

 野盗は吹っ飛び、周囲がざわつく。

 殴りつけた右おっぱいは伸縮し、サイズ感を取り戻し、元に戻る。

 おおっ!

 コレはしゅごい!


秘技ひぎおっぱいブロー!」、どやっ?


 すっ飛ばされて鼻血を流す男と、その奇っ怪な動きに驚く野盗たち。

「めっ、面妖な技を使いおって!」

「こ、この化物めっ!」

「ぶっ殺してヤルッ!」

「ヒャッハー!」


 ふむ、りてないみたいですねぇ。

 まぁ、今ので何となく体周りの操作感はつかんだんで、次はやっぱり、魔法だよね、魔法。

 魔法はデータベースから定型の呪文スペルを使うか、テキストベースで入力して効果発現の設定を行う魔法開発ツールか、Osiri(Over speech interpretation and recognition interface)っつーアシスタント機能による音声入力スタイルの3タイプ用意されている、と。

 面倒だから定型から選んでみようかな?

 いっぱいあるなぁ~、よく分からんし。

 んん~……コレでいいや。


「くらってくたばれ!乳錐嵐ティティツイスター(おっぱいぐるぐる)!!!」


 左おっぱいを、大胸筋ごと右回転!

 右おっぱいを、大胸筋ごと左回転!

 結構けっこう呑気のんきしてた野盗どもも、すでに十分でっかいおっぱいが一瞬、更にうすらデカくに見えるほどの回転乳力ちちぢからにはビビった!

 そのふたつのおっぱいの間に生じる魔空まくう状態の魅惑みわく的破壊空間は、まさに歯車的爆乳の小宇宙コスモ


「うおーーーっっっ!」

「ぐわぁぁぁーッ!」

「あひゃぁぁぁあ!」

「ヒャッハー!」


 ぐるぐる回るけしからん暴力的おっぱいの生み出した性的衝撃による破滅的エネルギー波の嵐によって、野盗どもは遙かかなたにまで吹き飛ばされた。

 うむ、――もうアイツらも戻ってはこれまい。


 それにしても――

 コレ、魔法か?

 なんとなく、グラ操作でもできそうな技だったけど?

 まぁ、ぐるぐる回すの、指疲れそうだから、ワンタップで発動するこっちのほうが楽だけどさ。


「ヒョウタンに戻れ、天スラ!」


「……ぁぃぁぃさぁ」


 ぶりゅぶりゅと不快な音を立てて、スライムは瓢箪ひょうたんの中に戻る。

 それにしても、こいつ――

 まったく、役に立たなかったね。

 ま、いっか。

 ――さて、と。


「お嬢ちゃん、大丈夫だった?」


「――天使さまァ……お待ち、お待ち申し上げておりました」


「……いや、は天使じゃないんだけどねぇ」


「いえ、天使さまは天使さまなのです!」


「えっ!?」


「わたしは天使さまをお呼びしました!ですから、その声に応えてくれた御方は、天使さまなのです!

 だからっ、あなた様は天使さまなのです、です!!」


 なっ、なんか……

 あつが、勢いがしゅごい!

 ぐいぐい来るな、この


「わたしの話を聞いてください、天使さまッ!!!」


 ――なんか、そこはかとなく面倒そう……

 これ、聴かないとダメなヤツですかぁ~?

 し、仕方ない。

 取り敢えず聴いておいて、うまく話だけ合わせておいて聞き流そう……うん。

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