サイド非リア充:この時間が永遠に続いてほしい
僕がスマホを忘れるという大失態を犯した日の放課後。
僕はいつものように一人、帰途についていた。
僕は通学に電車を利用していて、今は駅で電車が来るのを待っている。
プラットホームから景色を眺めつつ、僕は今日の出来事を思い出す。
でも、だからこそ、今日に限ってスマホを忘れたことはものすごく悔やまれる。スマホを忘れたせいで、今日の話がなかったことになったらどうしよう。
二星君は明日交換しようと言ってはくれたけど、そのためには明日、二星君に話しかけなくてはいけないわけで。ぼっちの僕が、男子とはいえ、生粋のリア充である二星君に話しかけることなんてできるわけないだろう!
あぁ、なんか、明日のことを考えるとお腹が痛くなってきた……。
うぅ、でも、せっかく友達を作るチャンスなんだし、この機会を逃すわけにはいかない。頑張れ、僕! 勇気を振り絞るんだ!
……その少しの勇気を出せないから、僕は高校でぼっちなんだよなぁ。
それに、学校のマドンナであり、僕の好きな人でもある菊池さんのラインを交換するチャンスなんだ。ここで頑張らなきゃ男じゃない!
……そうか、僕は女だったのかもしれない(諦めモード)。
「あれ、
きたよ、また来たよ幻聴! 最近よくあるんだよなぁこの幻聴。
確か今日の国語の授業でも菊池さんの幻聴が……。ってあれは幻聴じゃなかったんだっけ。
でも、さすがに今回は幻聴だろう。
………………。……え、まさか? いやいやそんな夢みたいな話が……。
僕はおそるおそる、声がしたほうを見た。
「やっほー。和泉君も帰りこっちなんだ?」
そこにいたのは、
そんな? なんで? 嘘だろ? え? え? え? いやいや、え?(語彙力消失)
菊池さんは僕と隣り合わせになると、ものすごく嬉しそうに微笑んだ。
えぇええええええええええ!? なんで菊池さんがここに!? それになんなんですかその笑顔は!? 超かわいいけど、僕にはもったないですよ!!
「そっかそっかぁ。和泉君もこの駅だったのかぁ。あれ、でも私たち、今まで一緒になったことないよね? 放課後はともかく、朝も一緒になったことないよね?」
ちょっ、菊池さんなんか近くない? え、女の子とこんな近くで話してもいいんですか? これってもう完全に恋人同士じゃない? それは僕が人との距離感をつかめてないだけですか、そうですか。
「えと……。僕、朝はいつも遅いから……」
「あぁ、そういえば、いつも朝は朝礼ギリギリに来るもんね。それで今まで会ったことがなかったのか」
僕が朝教室に来る時間を知っている……だと? それはいつも僕のことを見てるってこと? え、それってもう僕のこと好きじゃない? 僕たちってもしかして両想い? うん、多分違うね。いつも遅刻ギリギリだから印象に残ってるだけなんだろうな。
「それにしても今日の国語の授業、一緒の班になれて良かったね。私、和泉君と一緒になれたらいいなって思ってたんだー」
無邪気な笑顔で、彼女は言った。
え? なんですかそれは。それは僕のことが好きだから一緒の班になれて嬉しいとかそういうお話ですか? え、それってもう僕に愛の告白しちゃってない? もしかして『愛』ってこういうことなのでは?
「でも、二星君も同じ班になったのは意外だったなぁ。二星君は
菊池さんのその言葉には、確かに僕も同意だった。二星君が僕たちの班に入ってきたのは確かにイレギュラーだったと思う。そういう意味じゃ、僕と菊池さんが同じ班なのも結構なイレギュラーだ。いや、そもそも僕が余らなかったことが一番のイレギュラーだ。
でも、二星君のおかげで菊池さんとラインを交換できるチャンスができたんだ。二星君には大感謝だな、ホント。
「愛由ちゃんと二星君といえば、あの二人ってなんだか怪しいよね。朝も一緒に登校してきてるみたいだし。いくら幼なじみだからって男女でそこまでするかな、普通。和泉君はどう思う?」
うぉっとぉ!? 僕に話を振られてしまったぁ! って、まあ、僕と話してるんだから当然といえば当然なんだけど……。むぐぐ、なんて答えるのがいいんだ……。
「えと、うん、まあ、確かに、あの二人はちょっと怪しいよね」
「うんうん、そうだよね」
「その、なんか、今日の昼休みも男子たちに冷やかされてたし……」
「あぁ、プロポーズがどうのってやつね。もう付き合っちゃえばいいのにね」
「そ、そうだね」
うおぉ!? なんか僕、女の子と会話できてる? いや、まあ、菊池さんとの会話自体は一年の時に保健室でもしたんだけど……。なんかすげぇ! あ、そういえば僕、猫背になってないかな? ちょっと背中伸ばしとこ……。
「ところで、和泉君にはそういう話はないのかな?」
「え、僕……?」
僕が自分に指を差して訊くと、菊池さんがニコニコと頷いてくる。うわ、なんかすっげぇ楽しそう。めっちゃくちゃ可愛いな。
「いやいや、僕にそんな話があるわけないよ。ないない。絶対にない」
「ふ~ん。ホントかなぁ?」
菊池さんがニヤニヤしてる。いや、僕に恋バナとか求められても困るんですけど。マジでそういうのないんですけど。
「いや、あの……。知ってるでしょ? 僕の普段の学校での過ごし方……。あ、いや、僕の事なんて見てるわけないか……。えと、僕はいつも学校では一人で……」
「知ってるよ? いつも寝たふりして時間過ごしてるよね?」
「あ、うん……。だから、そんな僕に、恋とかそういう話、あるわけないよ」
「えぇ? そうかなぁ?」
「そうだよ」
と、そこで、僕が乗る予定だった電車がやってくる。た、助かった……。
「あ、じゃあ、僕、電車来たので……」
「うん、じゃあ、続きは中で話そうか?」
「え……」
嘘だろ? 知り合いの女の子と一緒に電車に乗るとか、それってもうデートじゃん。制服デートみたいなもんじゃん。
ヤバい。菊池さんと一緒に乗車とか、マジで嬉しい。え、でも本当に?
あれ、これってもしかして夢?
「ほら、早く乗ろうよ」
「え?」
菊池さんが僕の腕を引っ張って、駆け出した。
あ、ヤバい。心臓破裂する。ホント、これヤバい。
高鳴りだした胸の音は、しばらく止まってくれそうにない。
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