サイド非リア充:ぼっちにグループ活動は地獄

 昨日は結局、生徒会長の中森なかもり美佳子みかこ先輩以外には話しかけられなかったなぁ。

 そんなことを考えながら、僕は一人、休み時間に暇を持て余していた。


「あれあれぇ? 本なんか読んじゃって、大人ぶらなくてもあまねは可愛いから大丈夫だよ」


 昨日と同様、クラスメートの新島にいじま愛由あゆさんと小岩井こいわいあまねさんがじゃれ合っていた。


「うるせぇ! 本くらい読ませろ!」

「ほら、あまね。ここの漢字読める?」

「それくらい読めるわボケ!」

「じゃあ、読んでみて?」

「え、えっーと。………………」

「やっぱりぃ! 読めないじゃん!」


 読めないのかよ!

 思わず心の中でツッコんでしまった……。

 新島さんも、こんなに上手くからえたら楽しいだろうなぁ……。


「あまねはこう見えて図書委員なんだぞ! あんまりバカにしてやるなよ、愛由」


 と、ここで二星にぼし拓哉たくや君が二人の会話に割って入る。

 よくあんなに自然に会話に入れるもんだなぁ……。


「私を一番バカにしてるのはお前だろうが!」


 小岩井さんが叫ぶ。なんだかんだ、小岩井さんもこの関係性が嫌ではないんだろうな。

 僕は三人の会話が気になって、寝たフリをしながら、こっそり三人の姿を視界に捉える。

 すると、視界に入った新島さんは、二星君のほうを落ち着きがない様子でチラチラと見ては、頬を赤くし、髪の毛をいじりながらまた彼の方を見たりしていた。

 なんだあれ。わかりやす過ぎるだろ。

 新島さんは、二星君に惚れてるってことか……。


たく、あのね……」

「ん? どうした? 愛由」

「その、今日、昼休みはどうするの?」

「昼休み? まだ何も考えてないけど」

「じゃ、じゃあ、その、ね……。なんかほら、たまには、幼なじみで一緒にお昼ご飯を食べるとかって、ありだと思わない?」


 照れながらも、必死に自分の伝えたいことを伝える新島さん。可愛いなぁ……。

 それに、あんなふうに言い寄られる二星君が羨ましい。


「あぁ、別にいいんじゃないか? いつも一緒に昼飯食ってる友達に伝えとくわ。そいつらも一緒でいいか?」

「え……。えぇっと……」


 バカ! 二星お前! そこは二人で食べる流れだろうが! どうして自らフラグを折りに行くんだ!


「バカ二星! 愛由はお前と二人で食べたいんだよ!」


 ナイスアシスト小岩井さん!

 そして、顔を真っ赤にしてる新島さん可愛い! 恋する乙女って素敵!


「え、そうなのか? 愛由」

「べべべべべ別に!? そんなことないけど!? 何言ってるのよあまね! あぁ、でも、私と、択と、あまねの三人で食べたいかも! いいわよね!? あまね!?」


 くぅ……! せっかくのチャンスを! ヘタレたな新島さん! でも、これはある意味好都合! 三人の食事に持っていけたのはラッキーだ。後は小岩井さんが適当な理由をつけて抜ければ、自然と二人っきりにできる!

 って、なんで僕は他人の恋愛にこんなに興奮してるんだ……。

 どうやら彼らは三人で昼食をとることに落ち着いたらしい。そこでちょうど、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 次は三時間目、国語の授業だ。

 担当教師は、うちのクラスの担任でもある美人教師、新井あらいさき先生。

 さて、今日もてきとうに、先生の話を聞き流して時間が過ぎるのを待つか……。

 号令を済ませ、教壇に立つ新井先生が、今日の授業内容をみんなに伝える。


「今日の授業は、三人一組のグループ学習を行ってもらう!」


 ──その瞬間、僕は絶望の底に突き落とされる。

 グループ活動、それはぼっちが授業において最も恐れる活動。


「好きなやつと組んでいいぞ!」


 先生の、恐らくは良心で放たれたその言葉が、僕をさらに絶望へと叩き落とした。

 



 

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