サイド非リア充:ぼっちでも恋くらいする
うわっ、今あの一年生、
僕がいつものように朝礼ギリギリの時間に登校してくると、普段なら一通りの少ない渡り廊下で、クラスメートの二星君と一年生の女子がイチャイチャしているところを目撃してしまった。
僕は咄嗟に姿を隠したので、多分彼らに僕の存在はバレていないと思う。
まあ、下手したら姿を隠したりしなくても僕の存在なんて気づかれない可能性はあるけど、その可能性を考えると死にたくなるので、それは考えないでおこう。
僕は二人にバレないように、そろりそろりと近くの階段を上っていく。
ここからだと教室までは少し遠回りだけど、それも仕方ない。
僕は階段を上りきり、職員室の前を通って教室へ向かう。
ちょうど僕が職員室前を通る時、中から女生徒が姿を現した。
「失礼しました」
「おう、いつもお仕事ごくろうさん」
その女生徒は、ここの生徒なら誰でも知っているであろう、
中森先輩は、長い黒髪を翻しながら、女性らしい美しさで歩き出す。
「おはよう。そろそろ朝礼が始まるわ。遅刻しないよう、あなたも急ぎなさい」
「は、はい……」
彼女は僕とのすれ違い際、僕にそう声をかけた。
彼女は生徒会長として、見ず知らずの僕のような生徒にも話しかけ、注意を促してくれる。
……それだけで、惚れてしまいそうになる。
あんなに美しい先輩に話しかけられたというだけで、僕は今日一日幸せに過ごせる。
そして、同時に確信する。
――今日の学校での会話は、今のが最初で最後だろう。
教室に入ると、何やら言い争う声が聞こえる。
「可愛いって言うな!」
「何よ? 今のは誉め言葉じゃない!」
「お前のそれはバカにしてるようにしか聞こえない!!」
「そんなことないわよ? 今日もちっちゃくて可愛いわ、あまね」
「うぜぇ!!」
あぁ、いつものアレか。と僕は思う。
クラスメートの
本人たち、特に小岩井さんのほうはからかわれているというふうに思っているようだが、僕からしてみれば、仲睦ましくじゃれ合っているようにしか見えない。
一部の男子の間では、あの二人をエサに百合百合しい妄想をしている人たちもいるそうだ。
僕は彼女たちを横目に自分の席へ座り、寝たフリをする前に、ある人を探す。
その人は、窓の景色を眺めていた。
――
彼女がただ外を眺めているだけで、驚くほど絵になる。
僕、
きっかけは、一年生の頃のとある出来事。
勉強も、運動も、家事もできず、友達もいないダメ人間な僕が、彼女のことを好きになってしまった。
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