ステップドーター

Mallow

第1話

4月20日


父親なんか死ねばいいのに。なんて思う今日この頃。

今の私には仲の良い友人が周りにいないので、自分の気持ちを綴ることにしました。今日が一日目です。三日坊主にならないといいけれど。

さて、私は今、父親が死ぬかもしれないという事実に喜びを覚えています。もし死ぬとしたら、死因は癌とのことです。父親が詳しく話そうとしないので、どこの癌なのか、私にはわかりません。ただ、何万人に一人がなる、珍しい癌だそうです。進行具合は、かなり進んでいるようです。

 父親不在でもいつもと変わらず日常を過ごしていることが、少し面白く、そしてむず痒く感じます。不思議な感じがします。はたから見たら、私の中の感情は不謹慎なものかもしれません。私だけでなく、弟もママも、羽を伸ばして生活しているように見えます。きっと、父親がいるときの緊張の糸が、緩んだのか、もしくは切れてしまったのでしょう。

 ただ、ママは私と弟に父親を見舞うよう勧めてきます。しかし、私たちはきっとお見舞いに行かないでしょう。会いたくないからではないのです。ただ、父親に会ってもからの求めるであろう、悲しんでいるような、もしくは快復を祈り励ますような言葉を、捻り出すことができないと思うのです。私はなにも、父親をむやみやたら悲しませたり、失望させたくはないのです。

 もちろん、嬉しいこともありました。父親への見舞いの品を、ママが家に持ち帰るのです。ゼリーや焼き菓子、和菓子などです。私たち三人は和菓子を食べないので、来客用です。父親がいないから、ママが友人を家に呼ぶのです。

 一つ不思議なのは、父親を見舞う人が私が想像したよりも多くいたことです。単なる社交辞令なのか、それとも親しい人がたくさんいたのか。もしも親しい人がいたのであれば、父親は家の外で、猫かぶっていたのでしょう。どんな風に変身するのか、私には想像がつきません。

 今日はこれで。練習のない日に、また書きます。それでは。

 


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ステップドーター Mallow @jesuismallow

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