隔離世界のフラグメント

@Zi-A

プロローグ

 立ち並ぶ高層ビル群、溢れるくらいに詰められた人々。正に大都会と呼べるこの街は、我々の住む街とはいささか異なる。

 まずは中央の巨大なビル、そのビルには大きなモニターが高所に設置してある。しかし、そのモニターは液晶ではない。宙に浮いており、厚さがわからない程薄く、枠が存在しない。

 そして、地上のある男性は、路上でスマートフォンのようなものを操作している。左手でスマホを持ち、右手で操作している。男性が右手を離した瞬間、スマホから強い光が放出された。そして、光の先で、スケートボード……否、車輪のない、ホバーボードが虚空から構成されている。男性は、ホバーボードが完成すると、隣にあったタッチパネル式の自販機でジュースを購入し、それを片手にホバーボードでどこかへ行ってしまった。

 宙に浮く枠の無いディスプレイ、スマホから出てきたホバーボード、見るからに次世代の超技術と思われるこれらは、いずれもある一つの技術によって造られた。そしてその技術は、この世界の要素の一つとなり、文明の発展に貢献してきた。その技術こそ、"干渉技術"である。

 干渉技術とは文字通り、干渉する技術。非質量である情報を質量化したり、物理法則にない作用を起こしたり、世界の裏側にネットワークを作ったりと、この世の理を僅かながら書き換える技術である。

 その中でも、世に特に普及している、干渉技術を応用された端末、携帯型干渉技術応用質量投影装置、略してケータイと呼ばれるものがある。前述した男性がホバーボードを構成したように、ケータイに登録したあらゆる物体を構成、分解と収納することができる、非常に便利な代物だ。勿論、物体を登録するには販売者との契約、すなわち売買取引が必要となる。要するに無料で何でも手に入る、理想的な世の中ではないということだ。この世界の人々は基本的に、このケータイとそれに準ずる端末を生活の支えとして生きている。モノの購入、消費、使用、譲渡、入手等といった、消費者としての使い道から、製造、運搬、販売等といった、販売者や生産者としての使い道まで、その全てがこれ一つで事足りる、いわばこの社会を生きるための要と言えるだろう。

 そして、ここまで便利な情報端末がある世の中で、それに関わる犯罪が起こらないはずがない。それを見越し、世に蔓延る犯罪を裁く集団も存在する。それが、公安維持組織の数々である。この世界の公安組織は、民営、国営のいずれもいくつか存在し、そしてそれらの中でもトップクラスの規模と実力を持ち合わせる組織こそ、国営公安維持組織、"フラグメント"である。

 この組織は、日本全国に広く支部が設置されており、本部は北海道、札幌市の中心にあると言われている。日々犯罪に目を光らせ、現実とネットワークの中を偵察、犯罪やテロリズムを発見し次第、犯人の確保と、被害の軽減を行う。

 また、フラグメントは、日本における最重要干渉技術研究機関でもあるため、組織内の機密情報が多い、謎多き組織でもある。

 今この時から始まるのは、運命に招かれた少年少女が繰り広げる、檻の中の戦争の物語である。

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