瞳を閉じて、まだ見ぬ君を見る

渋沢慶太

第1話 人形を愛す人間

「もっと綺麗な声を聞かせてよ」

耳は付いているが、聴力はない。

「どんな味がするか教えてよ」

口は付いているが、味覚はない。

「もっと僕の事匂ってよ」

鼻は付いているが、嗅覚はない。

「もっと僕を見てよ」

目は付いているが、視力はない。

「もっと痛いって顔してよ」

皮膚はあるが、痛覚はない。

なんだ。

死人も人形だ。

「キスして良い?」

死人は首を振らない。

思いのまま。

我が儘なんだ。

僕は。

日本人形は日本人。

フランス人形はフランス人、又はハーフ。

この世は人形の塊だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

瞳を閉じて、まだ見ぬ君を見る 渋沢慶太 @syu-ri-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る