激闘編
第七回X-TENカップ争奪戦
一回戦
第一試合 汚れなき老人 ギャリソントキタ 対 汚れなき犬 ポルナレフ・ザンドリア・チャーリー・ドラックソン
同門対決となった一回戦第一試合。
序盤、ギャリソンを支えてきた老犬ポルナレフがまさかの猛攻を見せる。
「私は貴方に伝えなければならない事がある」
その言葉と共に圧倒的な乱撃でギャリソンを圧倒するポルナレフ。
しかし、その冷徹なまでのポルナレフの乱撃の中に、ギャリソンは一筋の熱い想いを見出していた。
ポルナレフの後先を考えない特攻に似たプロレス……、その内に秘められた想いは地球の歴史を受け継いできた彼の責任感だったのだ。
ポルナレフの想いを全て受け止めたギャリソンは乱撃を掻い潜り、起死回生のノーザンライトボムによって彼を撃破する。
試合後にギャリソンが受け継いだものは歴史の重み、そして、プロレス世界安定の使命だった。
試合時間 17分57秒 決め技 ノーザンライトボム
○ギャリソン ×ポルナレフ
第二試合 惨殺ダイコン斬り オムライス欲望 対 アステカの飴細工師 トランプマンゆきぐにJr.
共に偉大であり、強大なまでの母親を持つ女レスラー対決となった一回戦第二試合。
強大な母を疎み、憎悪する事で自己を保ち続けたオムライスと、偉大な母を愛し、尊敬する事で成長してきたトランプマン。
そのどちらが勝るのか注目の一戦だったが、意外にも素早い展開で決着の時は訪れた。
何気ない張り手をカウンターで捉えた一撃に続く連続攻撃により、オムライスはトランプマンをあっさりと打ち破る。
愛情よりも憎悪が勝るという『天下布武』の言葉に相応しい一戦だった。
試合時間 08分43秒 決め技 あの夏の熱い日を君は憶えているかい
○オムライス ×トランプマン
第三試合 邪悪な大腿筋の間 ジャッカルこいも 対 白い下忍 坂君NEO
ジャッカルの七光りと称されるこいもと下忍坂君による最下層レスラー代表と言える者達の一戦。
共に最下層上がりながらもハイレベルな試合展開を見せ、一進一退の見事な戦いを繰り広げる。
しかし、地力の差が出たのか、七光りと称されるこいもが終盤坂君に体力で圧倒され撃破された。
試合時間 19分25秒 決め技 ネオ・サンライズ・セントーン・ダイブ
○坂君 ×こいも
第四試合 ポルナレフの幻影 チャージフス・リー 対 ガングロ殺害同盟 ビブリボブリあきはばら
チャージフスが一瞬の無呼吸打撃でビブリボブリを粉砕する。
圧倒的な実力差を見せた一戦だった。
試合時間 02分54秒 決め技 チャーリーのラブラブ犬アタック
○チャージフス ×ビブリボブリ
第五試合 チロルと桜の舞 南斗白鳥座 対 復活のミ=ペティト ミッペ
ギャリソンに敗れたミッペの復帰戦。
相手は中堅レスラーのホープと称される南斗白鳥座だったが、危な気のない試合展開で軽く撃破した。
試合時間 12分09秒 決め技 鎌攻撃
○ミッペ ×南斗白鳥座
第六試合 愛とエロスのブレンド スペペペ愛妻家 対 夕陽に向かってGO!! 夕陽向轟
最弱レスラーながら根強い人気を持つ夕陽向と、実力レスラーながら人気薄のスペペペの好対照の一戦。
観客の応援に後押しされてか序盤夕陽向が押すものの、元来の圧倒的な実力差は覆しようもなく敗退する。
しかし、試合の最後に彼のお約束の夕陽に向かって走る姿を見られた事で、彼のファンは皆満足気であった。
試合時間 09分07秒 決め技 監獄固め
○スペペペ ×夕陽向
第七試合 TAUのムスメさん TAU 13 対 ホノルルの女ハンター パプーン安楽死
「おまえの母さん、いい女だったぜ」
パプーンの下卑た言葉から始まった一回戦第七試合。
質実剛健であるTAUは彼の言葉に耳を貸さずに試合を続けるが、パプーンの次の一言に息を止める。
「おまえの母さんが死んだ理由……。知りたくはないか……?」
その言葉で動きを止めたTAUを容赦なく攻め続けるパプーン。TAUに蓄積されていくダメージ。
「俺に勝ったら、おまえの母さんが死んだ理由を教えてやるぜ」
しかし、パプーンのその言葉に目を覚ましたTAUは、母直伝のTAUスナイパーでパプーンを撃破する。
最後にパプーンが去る前に残した言葉、それは「ジャケットには気を付けろ」というものだった……。
試合時間 27分32秒 決め技 TAUスナイパー
○TAU ×パプーン
第八試合 マウント○○ X-TEN 対 汚れなき弟 時田忠隆
「僕は兄さんを超えてみせる」
その誓いを胸に最強レスラーX-TENに挑む忠隆。
彼は最強の兄を持ちながらも、自分だけいつまでもうだつの上がらない負け犬根性で序盤から猛攻を仕掛けていく。
圧倒的なまでの猛撃にさしたる抵抗も見せられないX-TENに繰り出した、時田流奥義『旋風脚』。
だが、X-TENはその旋風脚を軽く片手だけで受け止めてみせると、リングに忠隆を思い切り叩き付ける。
それだけの事で忠隆の意識は飛び、X-TENの強大さだけが浮き彫りになったのだった。
試合時間 15分07秒 決め技 一本背負い
○X-TEN ×忠隆
二回戦
第一試合 汚れなき老人 ギャリソントキタ 対 惨殺ダイコン斬り オムライス欲望
共にX-TENと深く関わりを持つ者達による二回戦第一試合。
「あの人が最強を求めたのは貴方への執着のせいだ!」
オムライスの慟哭が響く中で、ギャリソンは辛うじて彼女の乱撃を捌いていく。
最強を求める者は孤独となり、周囲の人間までも孤独にしていく。
その被害者であるオムライスの怨嗟は目を覆うばかりの惨状であった。
血を求めるのでなく、最強を求めるのでなく、ただ未来と愛への渇望から生じる憐れなほどの彼女の攻撃性。
その現実にギャリソンは辛い表情を浮かべつつも、彼も彼の譲るわけにはならない信念を吐露する。
「私はX-TENを制止せねばならない。それこそが互いに高め合った好敵手であるという事なのだから」
そして、ギャリソンはオムライスの攻撃を避ける事無く、全てを受け止め、全てを受け入れて、最後の一撃を繰り出した。
それこそ新たに対X-TEN専用に開発した本家本元ギャリソンロックβであった。
こうしてギャリソンの新技に捕らえられ、愛に餓えた野獣は微動だに出来ぬままに散ったのだった。
試合時間 28分17秒 決め技 本家本元ギャリソンロックβ
○ギャリソン ×オムライス
第二試合 白い下忍 坂君NEO 対 ポルナレフの幻影 チャージフス・リー
下層レスラー坂君とポルナレフの幻影と呼ばれるチャージフスの一戦。
ジャッカルこねこ失踪の謎を探るチャージフスは下忍である坂君になど興味も示さず、一瞬で彼を撃破しようと猛撃を仕掛ける。
しかし、己を下層レスラーと自覚している坂君はそのチャージフスの速攻を読んでいた。
相手は強大。相手との実力差は明白。それ故に相手に慢心が生まれる事を坂君は読んでいたのだ。
その読みからチャーリーのラブラブ犬アタックの乱打を避け、坂君は起死回生の必殺技を仕掛ける。
ネオ・サンライズ・セントーン・ダイブ。
ルチャの技を源流とした坂君最大の必殺技だ。
不意を衝かれたチャージフスは坂君の技を避ける事が出来ず、そのまま大番狂わせの試合は終わったのだった。
試合時間 04分06秒 決め技 ネオ・サンライズ・セントーン・ダイブ
○坂君 ×チャージフス
第三試合 復活のミ=ペティト ミッペ 対 愛とエロスのブレンド スペペペ愛妻家
同門対決ながら実力差が明白に過ぎる一戦。
誰しもが熟練のミッペの勝利を予期しており、序盤の展開はその通りになった。
「アンタの実力ではアタイには勝てないミネ」
冷徹に囁くミッペの言葉に聞く耳も持たず、突然、スペペペは纏っていた衣服を脱ぎ始める。
そうして全裸になったスペペペは一糸纏わぬ姿で誇らしげに言い放つ。
「中国拳法家が靴を脱ぐという行為は、ボクサーがグローブを外す行為に似る。私が全裸になるという事は……、それほど危険だという事だ!」
瞬間、スペペペは衣服を纏っていた時の数倍の速度で、ミッペを締め技により組み敷いた。
無論、彼女の締め技など、簡単に脱出出来る単純な技であるはずだった。
だが、何故だか全裸の彼女の肉体は、まるで蛸の如くミッペの肉体に絡み付いていた。
そうしてミッペは奪出不可能なまま彼女に締め落とされてしまったのだった。
試合時間 19分09秒 決め技 全裸固め
○スペペペ ×ミッペ
第四試合 TAUのムスメさん TAU 13 対 マウント○○ X-TEN
パプーンの言葉に戸惑いを隠せないTAUは、X-TENの脳天唐竹割りの一撃で粉砕されたのだった。
試合時間 02分05秒 決め技 脳天唐竹割り
○X-TEN ×TAU
準決勝
第一試合 汚れなき老人 ギャリソントキタ 対 白い下忍 坂君NEO
順当に実力を見せるギャリソンと、金星を上げ続ける坂君の注目の一戦。
「僕は貴方を超え、新たなるプロレスの時代を築き上げて見せます」
「君にそれが出来るのならば、私はそれを若い君に引き継がせてもよいのかも知れないな。故に、その若さが勢いだけのものではないと証明出来るのならば、全てを君に託そう」
プロレス世界の未来を案じる二人の激戦が予想されたが、試合は意外にも堅実で地味なものだった。
試合展開はアームロック、四の字固め、羽根折り固め、チキンウィングフェイスロックなどの基本技の応酬。
派手な技を封印し、お互いに基本技のみで己の実力を示したその貴重な一戦の勝者は、若い挑戦者ではなく老獪なベテランだった。
坂君は敗れはしたものの、この一戦で大きな何かを掴み、ギャリソンとの再戦を誓うのだった。
試合時間 56分45秒 決め技 スピニング・トーホールド
○ギャリソン ×坂君
第二試合 よわさもろだし 風間愛々全裸 対 マウント○○ X-TEN
衣装を捨て風間愛々全裸と名を改めたスペペペの新たなるデビュー戦。
驚愕のその試合は一瞬で決着した。
X-TENの凄まじい速度の張り手を避けた全裸は彼女に飛びついた刹那、右腕を破壊したのだった。
中流レスラーであるはずの全裸の、誰もの予想を裏切る衝撃的な勝利。
この一戦がプロレス世界を新たなる混迷に導いていく事になるとは、その時はまだ誰も気付いていなかった。
そう。この一戦をほくそ笑んで観戦していた、ある幼い瞳を除いては……。
試合時間 00分15秒 決め技 腕十字
○全裸 ×X-TEN
こうして更なる混迷と混乱の迷宮に迷い込むプロレス世界……。
世界は確実に崩壊と混沌へと進んでいく……。
そして、十五年の時が過ぎた……。
時に河童歴985年。
舞台は『オムライス欲望の簡単クッキング』の流れを汲む新団体『ノイエDC』本部。
新たなる主人公の名は『ブラックジャケット』PAN ZⅡ。
TAUに育てられ、ギャリソントキタから指導を受けた新鋭レスラーだ。
今此処に新たなる……、そして、十五年前の真相を含んだ、真の戦いの幕が上がる……。
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