犬に当たる

悪夢は見ない。


記憶も戻らない。




ただ、あの2人と出会ってから

変に身体が昂っている。


特に今日は、手がじわりと熱い。




「奏兎、今日どうかした?」


「…いや?どうもしないけど。」




俺、変?


やけにボーッとしたり、

授業も居眠りしすぎてエラい目にあったし。


集中できない。



「ゲーセン寄ってく?」


「…そうだな。」



気がつけばボーッと意識が飛んでいるみたいで、気を紛らわせないと可笑しくなりそう。


ボーッとしている間、自分が何を考えているか分からない。

言うなれば、自分自信が身体を放棄しているみたいな、大雑把だけどそんな感覚。



「な、カートじゃなくて

今日ゾンビのゲームで賭けようぜ。」


「うん。」



シューティングはカートに比べたら苦手なんだよな。

まぁ、この前はカートだったし…ここは平等に。


賭けは明日購買で昼飯奢るってのが定番。


いつも通りゲーセンは高校生で賑わっていて、プリクラを撮る女子高生や俺らみたいにゲームに熱中する男子高生が群れを為していた。



…けど、不穏な空気が何処となく漂っている。

暗く、冷たい。


どんよりとした空気はいつも感じないのに、何故か重い。

賑わう声も遠く聞こえ、

ゾクゾクと背筋を凍らせた。


足が、止まる。





「奏兎?」


「…あぁ、すぐ行く。」






『本能のままに危ない場所は避けて。』



……多分、大丈夫。

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