.

「ところで、君も夢を見たことがあるんだね。」


「えッ?」


「夢の話の食い付きがよかったからね、すぐ分かる。」



真っ直ぐに見つめられて、

なんだか逃げ場がないように思えた。



「実は…俺も夢を見るんです。」


「どんな?」


「…仲間がどんどん殺されていって、化け物に喰われてッ……。」




息が苦しくなる。

思い出すだけで胸がつかえて蹲りたくなる。



「そうか。」


「そこまでしか、」


「その夢、やけにリアルだと思わないか?」



その言葉にドキッとした。


目が覚めると、

まだ鼻に生臭さが残っていたり、

恐怖がさも自分のトラウマかのように残っているのだ。



「現に、自分自身が経験していたとすれば潜在的な恐怖が引き出されたとは思わないか?」


「それも前世、とかいう話ですか?」


「そう。」



黒い髪に黒い瞳。

どこか懐かしいと思っていた。


思っていたんじゃない、感じていた。

心じゃなくて俺のもっと深い部分が彼を懐かしんでいるのだ。





「何故、僕が君を助け、ここへ招いたか分かる?」


「……え?」


「俺ん家だけど。」


「僕が君を憶えているからだよ。石川兎斗いしかわ とびとくん。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る