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「吉田くん、鬼は信じるか?」


「…は?」


「鬼。そんな奇々怪々なもの、信じられない?」


「……よく、分かんないです。」



あれが、鬼だというのなら。


あの、姿かたちのない煙が鬼だというのか。



「そうか、難しいか。」


「言えばいいだろうよ。さっさと本題。」


「虎徹さんは黙ってて…

まぁ、それもそうだけど。」




佐藤さんは俺の目をジッと見つめて、そっと首筋にピタリと手を置いた。


その手はやけに冷たくて、思わず怯む。




「君は、前世が誰だか知ってる?」


「…は、い?」


「前世の記憶…時々自分の記憶じゃないものが混ざったりしたことは?」



夢、なら見るけど

それを言ったら取り込まれて丸め込まれて巻き込まれるに決まってる。


彼は首筋に当てた手に力を込めて、



「嘘は、良くないね。」


「へッ?」


「はッ、サルの猿真似かよ。

くっだらねェ。」



佐藤さんは佐野さんをギンと睨むと俺に向き直った。



「話してくれる?」


「いや、えぇと…。」


「…じゃあ、僕の話から聞いてくれるか?」




黒い瞳をジロリと俺に向けると、白い手首を差し出した。


白い手首にはケロイドのようなアザが乗っかっていて、思わず息を飲んだ。




「この痣は、生まれつきのモノだ。」


「…生まれつき。」


「この年になるまで身体の成長と共にこの痣も成長してきた。」



傷に大事そうに触れた。



「痣がこの位まで大きくなると、毎晩僕は悪夢に魘されるようになったんだ。」


「悪夢。」


「これは多分、僕の前世の記憶じゃないかと思う。」



同じ、かもしれない。



「どんな、夢なんですか?」



彼は首を横に振る。



「残念ながら、もう覚えてはいないんだ。」

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