.
「…は?」
「とりあえず、ついてきてもらえるかな。」
吐き出した物を準備が良すぎるくらいに手早く処理し、立ち上がる。
彼はさも当然のように手を差し伸べた。
「…その手、俺の吐いたもの触りましたよね。」
「あぁ、失敬。」
自力で立ち上がり、俺は男の人と距離をとる。
「…さっきはありがとうございました。」
「うん。」
「では、これで失礼します。」
「いやいやちょっと待って。」
俺の首根っこをグッと掴んで、俺を引き戻した。
「いやそっち触った手!!」
「君、このままだと鬼に食われて死ぬよ。」
「…は、い?」
「今日、僕がここにいるのも、
君が襲われたのも偶然だと思う?」
……は?
あの路地は俺の帰り道で、少し前からやけに雰囲気が悪かったのを覚えている、けど。
それが、偶然じゃなくて。
「偶然じゃないよ、俺は君をいつも見ていたし、鬼も機会を伺ってた。」
「…さっきから、鬼鬼って、鬼って何なんですか?!」
非現実的なことをあたかも存在するかのように語る彼の顔は真剣で、鬼という存在を肯定しなければならない気がしている。
「話せば長くなる。死にたくなければ僕について来てくれない?」
「死にたくなければって…。」
「あまり、手荒なことはしたくないし、出来れば君の意思でコチラ側へ来て欲しい。」
なんだよそれ。
可笑しいだろ。
鬼とか、呪術とか。
確かに、恐ろしい目に遭った。
彼に助けられたけど…。
突然、頭に衝撃が走った。
「コラ!虎徹……」
黒髪の男の人が焦る声が遠く聞こえる。
慌てた表情を最後に、俺は意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます