第二十三話 ポチとポチの家族 4
●第二十三話 ポチとポチの家族 4
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回想 ポチ視点
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小学校の入学式の日でした。
式も終わり、ポチ含めた1年生一同は教室に案内されました。
初めて入る教室、席を間違えないように確認してから座ります。
「それでは皆さんに自己紹介をしてもらいます。名前と、なんの動物なのかと、好きなことを一人ずつ立って話してください」
クラスのみんなが順番に自己紹介しています。
元気に発表する子もいれば、緊張して声が出てない子もいます。
「――それじゃあ次の子」
ポチの番が来ました。
よし、自分はちゃんと言うぞ。言いたいことはバッチリだ。
そう意気込んだポチは、「はい」と返事して立ちました。
「僕はアフリカゾウのポチです! 好きなことはキャッチボールです! よろしくおねがいします!」
よし言えたぞ。
そう思ったポチの感触とは裏腹に、周囲の様子がなんだかざわついてることに気が付きました。
先生の顔も神妙な面持ちです。
なにかおかしなこと言ったのかな……?
急に不安になるなか、一人のクラスメイトが声を上げました。
「お前アフリカゾウじゃくて、イエイヌじゃん!」
どわはは!
周囲のみんなは笑い出しました。
「え、僕ってアフリカゾウじゃないの……」
ポチはそのときになって初めて、自分と家族達とで、違う動物同士だってことに気づきました。
「がーん!」
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回想 終了
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「……なんか可愛そう」
ハト丸は言いました。
「変な同情はよせよ」
そんなポチにハト丸は必死になって言いました。
「だって、自分の家族が、もしも本当の家族じゃないならすごく辛いもん!」
そう口に出したハト丸はポチの気持ちに気が付きました。
「あ、だとしたらアフリカゾウの家族たちと家族のままでいたいから、ハナちゃんたちの家族と会いたくなかったんだ! 不安で仕方なかったんだね」
「……」
真意を見抜かれたポチは静かに黙っています。
「だとしたらきっちり言うべきだよ。ハナちゃんのママと――ゾウ太郎くんのママにも」
――それは、家族にも言えずにいたことだった。
「ゾウ太郎くんのママ、ポチがどっちの家族と暮らしたいのかわからないって言ってたよね。ポチはホントのことを当ててほしかったのかもしれないけど、自分の気持ちなんて言わなきゃ分かんないよ。きっと、ゾウ太郎くんのママもポチと同じように不安なんじゃないのかな?」
「……これ以上は言わなくていい」
ポチは、静かに言いました。
「一緒に帰るか」
「……うん!」
そうして、二人でゾウ太郎くんの家まで帰るのでした。
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ゾウ太郎くんの家
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「「ポチ!」」
帰ってくるとゾウ太郎くんとお母さんがポチのもとへ駆け寄りました。
「母ちゃん、勝手なこと言ってごめん」
「いいのよ! 母ちゃんのほうこそごめんなさい!」
ゾウ太郎くんのお母さんは胸を張って言いました。
「ポチは私達家族の一員よ! 血のつながりなんて関係ないわよね! ハナちゃんたちには悪いけど、母ちゃんがビシッと【ポチは私達と暮らします】って言うわ!」
「うんうん! ポチとはずっと一緒がいい!」
そんな二人の言葉に、ポチは涙を浮かべて言いました。
「母ちゃん……兄ちゃん……ありがとう。その言葉は僕から直接ハナちゃんの母ちゃんに伝えるよ」
3人、体を寄せて抱き合いました。
いい話だなあ……と旦那さんは思いました。
そして、ハナちゃんの様子が気になったので、ちらりと目をやるとケロッとしていました。
「ポチがハナちゃんのママに会ってくれるって」
「ハト丸、ポチを説得してくれてありがとう!」
「でも家族にはならないって」
「ああ、別にいいんですよ。お母さんはポチに会いたいってだけ言ってたし」
「じゃあいっか!」
……なんとなく、ゾウ太郎くん家族は勘違いしてそうだったので、後で誤解を解いとこう
そう思う旦那でした。
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