第十話 ハト丸の公園デビュー

●第十話 ハト丸の公園デビュー


 ハト丸も順調に大きくなっていきました。

 そして、ついに公園デビューを迎える日が来ました。

 リョコウバトさんはハト丸をおんぶしました。

 そして、私はドアを開け、三人で外にでました。


「きゅる、きゅる!」


 ハト丸にとって、全てが初めて見る世界でした。

 興味深いのか、キョロキョロと目と顔を動かしています。


――これは樫の木だよ

「ハト丸ちゃんが食べてるどんぐりはここから取れますわ」

「きゅるるるる!」


――今通ってるところは道路で、ビュンビュン走ってるのは車だよ

「ハト丸ちゃん、車に当たらないように気をつける、いいですわね?」

「きゅる?」


――道に沿って並んでいるのは家だよ

「あそこは大家さんご夫妻の家で、こっちは田中さん、ふふ……ハト丸ちゃんならすぐに仲良く出来ますわ」

「きゅるー」


――上に広がっているのは空だよ

「大きくなったら、あなたは空を飛べるようになりますわ!」

「……きゅる!」


 私達はハト丸にいろんな景色があることを語りかけました。

 そして、ついに目的地の公園に着きました。

 そこには、遊んでる子供や談笑してる親御さん、ベンチに座るお爺さんなど、いろんな方々がいました。

 その中に入ろうとする私達の前に、正面から誰かが近づいて来ました。


「わん! わん!」


 とても可愛らしい一匹の子犬でした。

 首輪がついているので、飼われてるイエイヌのようです。


「まあ、可愛らしい子供ですわ」


 リョコウバトさんは、腰をおろしてイエイヌをなでました。


「へっへっ、わん!」


 イエイヌは撫でられて喜んでいるようです。


「きゅるるる」

「あら、ハト丸ちゃんもこの子を撫でたいのですか?」


 リョコウバトさんはハト丸を手で抱き込んで、イエイヌに近づけました。

 イエイヌもハト丸に興味があるみたいで、鼻を近づけ、スンスン匂いを嗅いでいます。


「きゅる!」


 ハト丸はイエイヌの頭に、ぽんと手を置きました。

 それに対して、イエイヌも喜んだ様子で


「わん!」


 と鳴きました。

 とても微笑ましい様子に、私もリョコウバトさんもずっと笑顔で眺めていました。


「この子も小さいから、まだ喋れないのですわね」


 リョコウバトさんはそうつぶやくと――


「あ、にほんごで、はなしたほうがいいですか?」


 とイエイヌは答えました。

 喋れるんかい!


「わん! わたしは、イエイヌのハナです」

「きゅる」

「はじめまして、ハナちゃん。私はリョコウバト、この子は息子のハト丸ちゃんですわ」


 私は旦那です

 と紹介が終わった後、ハナちゃんはハト丸をじーと見つめています。

 察したリョコウバトさんはハナちゃんに言いました。


「ハト丸ちゃん、抱えてみますか?」

「わん!」


 ハナちゃんは、小さなハト丸をゆっくりと抱きかかえました。

 とても嬉しいのか、わぁ、と感嘆の声が漏れ出ています。


「ちっちゃい……あかちゃんだぁ。あかちゃんだぁ」

「きゅるー」


 小さな子にとても関心があるようです。

 そうして、ハナちゃんはずっとハト丸を抱きかかえました。

 すると、また正面から犬が近づいてきます。


「ハナちゃーん!」

「まま!」


 どうやら、ハナちゃんのお母さんのようです。

 スラリとして、背が高めな美人さんです。

 お母さんが私達に話しかける前に、ハナちゃんが話し始めました


「みて! あかちゃんだよ! はとまるってなまえだって!」

「あら、とても可愛らしい子ですね」


 と、娘に返した後、私達の方を向いて言いました。


「始めまして、ハナちゃんの母です。娘がご迷惑ではありませんでしたか?」

「いいえ、とんでもございません! とてもいい子でしたわ!」


 そうして、私とリョコウバトさんと、ハナちゃんのお母さんとで、会話をしました。

 一方、ハナちゃんとハト丸は――


「よしよし、いいこですね。はい、ごはんだよ」

「きゅる! きゅる!」


 おままごとで遊んでいました。

 そして、そのまま時間が過ぎて行きました。

 すると、「おーい!」という声がどこからか聞こえてきました。


「あ、御主人様が呼んでます! 行きましょうハナちゃん!」

「わん! はとまるくん、またあそぼうね」


 そうして、二人は、「わん! わん!」と鳴き声を上げながら、帰っていきました。

 ……飼い犬は大変だなぁ


「ふふ! 素敵な親子でしたわね」


 子育てママと仲良くなり、ハト丸には初めての友達が出来ました。

 公園デビューはバッチリと決まりました!



●第十話 ハト丸の公園デビュー 完

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