第九話 息子の生誕と授乳

●第九話 息子の生誕と授乳



 ついに、待ちに待ったこの瞬間が来ました。

 日が少しだけ登った早朝にリョコウバトさんが、生まれそうですわ! と大声で私を呼びました。

 急いで飛び起き、たまごちゃんのもとへ駆け寄りました。


「もうすぐ会えるのね」


 そうつぶやくリョコウバトさんと二人してたまごちゃんをじっと見つめました。

 カミ太くんの、ヘノヘノモヘジと飛んでるリョコウバトの絵が描かれた殻にヒビが入り、それがだんだん大きくなっていきました。


――頑張れ!


 夫婦ともに、同じ気持ちでした。

 そして、ついに殻を崩して、産声を上げました――





「きゅるるるるるるるるるる!! きゅるるるるるるるるるる!!」


「まあ! この子の名前はキュルルちゃんですわね!」


 話し合いの結果、名前はハト丸という名前になりました。

 ちなみに、男の子です。



~~~~~~~~~~~~~~~~

 少し時間が経ちました

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「きゅる、きゅる」


 ハト丸はリョコウバトさんに抱えられながら、目をキョロキョロ動かしています。

 その純朴さはまさしく天使です。


「ほーら、ここはハト丸ちゃんのお家ですよ~」

「きゅる!」


 おお、返事した


「ふふ……可愛らしいですわ」


 と、そんなこんな可愛がっていると、突然、ハト丸は泣き始めました。

 もしかして、これは……


「お腹がすいたのですわね?」


 すると、リョコウバトさんはハト丸を私に手渡しました。

 ……おお、これが赤ちゃん特有の暖かさ


「ミルクの準備をしてきますわ」


 そうして、リョコウバトさんは台所へと向かいました。

 私は泣きじゃくる息子を抱いて、よしよしとあやしながら、ただただ可愛がりました。


「あなたー、ピジョンミルクの準備が出来ましたわ」


 帰ってきたリョコウバトさんは、白い液体が入った哺乳瓶を手に持っています。

 私はハト丸をリョコウバトさんにわたすと、ハト丸は待ってました! と言わんばかりに哺乳瓶を口に加えて、ごくごくと飲み始めました。

 ああ、かわいい


「ふふ! とっても元気ですわね」


 ハト丸が飲んでいる中、私はリョコウバトさんに言いました。

 哺乳瓶を使ってるということは、粉ミルク?


「いいえ、粉ミルクじゃなく、れっきとした私のピジョンミルクですわね」


 ピジョンミルクって?


「ふふ……鳩のミルクだからそういう名前なだけですわ

 哺乳瓶に入れたのは、なんだか直接あなたに見られるのは恥ずかしかっただけですわ……」


 リョコウバトさんは顔を少し赤らめて言いました。

 悪い、変なことを聞いたね


「いいえ! 少し気にしすぎた私がいけないのですわ!」


 リョコウバトさんの声に、ハト丸はびっくりして、ぐずりはじめました。


「はわわ、びっくりさせてしまいましたわ」


 なれない子育てに、夫婦一同ハチャメチャするのでした。



~~~~~~~~~~~~~~~~

 夜

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 ハト丸はゆりかごの上で、ぐっすりと眠っています。

 その穏やかな笑顔を眺めた後、私は寝る準備をはじめようとしたとき、リョコウバトさんから話しかけられました。


「ねえ、あなた」


 なんだい?


「一つお願いしてよろしいでしょうか?」


 深刻……というよりかは言い出しにくいような表情です。

 うん、なんでも言って


「実は、私のピジョンミルクなのですが、あの子が飲む分以上に体で作られてしまってるみたいで……」


 私はリョコウバトさんの胸をちらりと見ました。


「捨てるのももったいないので、あなたに飲んで手伝ってもらってもいいですか?」


 飲む……リョコウバトさんのミルクを!

 私は思いがけない提案に、とてつもない充足感と快楽が頭に溢れました。

 世間一般では、マニアックなプレイ扱いに違いないが、これには正当な理由しかない――!

 故にやましい気持ちなんてありません。

 ぜひ、私に手伝わせてください


「まあ! あなた! 少しビースト化してますわよ」


 おっと、冷静さを少し欠いてしまった……

 大丈夫、いつでも来て


「それでは……失礼します」


 リョコウバトさんは上着を脱いで胸を――



 ――出したりすることは全く無く、私にキスしました。


 ――!

 驚く私に対して遠慮なく、リョコウバトさんは私の口を舌でこじ開けて、口同士が完全に密着した状態になりました。

 突然のディープキスに、私は呆然とした次の瞬間――

 なんと、大量の液体がリョコウバトさんの口を通して流し込まれました!


「ちゅ……チュ……はむ……」


 本能的に口を離そうとする私に、リョコウバトさんは逃すまいと強く抱きしめました。

 次々と口に注がれる液体を、私はついに飲み込みました。

 淡白な味わいだが、とてつもなく力が湧いてきそうな味でした。

 しばらく、ごくり、ごくりと飲み続けました。

 そして、コップ一杯分の量を飲んだくらいで、リョコウバトさんの唇が離れました。

 リョコウバトさんの唇から、白い液体の線がつたっています。

 リョコウバトさんは私に、赤面の表情で尋ねました。


「どうでしたか……私の、ピジョンミルク……」


 そっか、ピジョンミルクって、おっぱいから出ないんだね……

 ……最初は驚いたけど、いいお味でした


「でしたら……」


 リョコウバトさんは、魅惑の表情で言いました。


「まだまだ残ってるのですが、いかがしますか?」


 その瞬間、私の理性の糸がプッチンと切れました。

 私は即座に、リョコウバトさんの唇に吸い付きました。


「まっ、ちゅっ……はむ」


 待って、と言おうとしたのでしょうが構いません。

 さっきの仕返しでした。

 私が吸い付き始めると、リョコウバトさんの口からピジョンミルクがどんどん溢れ出てきました。

 私は自分の思いのまま、それを飲みだしました。



~~~~~~~~~~~~~~~~

 しばらく経ちました

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 正直、お腹いっぱいになりました。

 リョコウバトさんも満足した表情です。

 ……いっぱい私が飲んでしまったけど、ハト丸の分って残ってる……?


「ええ、残ってますわ」


 なら安心した。

 そろそろ、眠ろうとした後、リョコウバトさんはとんでもないことを言いました。


「あなた、明日もお願いしますわね」


 ……お、おう、任せて


 リョコウバトさんのピジョンミルクを飲んだハト丸は、すくすくと成長していきました。

 そして、毎晩ピジョンミルクをお腹いっぱいになるまで飲み続けた私のお腹は、ブクブクと成長していき、体重が十キロ分増えました。

 リョコウバトさん……だ、出しすぎ……



●第九話 息子の生誕と授乳 完

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