第四話 リョコウバトさんとの新婚旅行

●第四話 リョコウバトさんとの新婚旅行



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京都 天橋立(あまのはしだて)

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 天橋立――

 

 日本三景の一つ

 京都といえば、お寺を始めとした歴史のある伝統建築ばかりに目が行きがちですが、京都市から離れると、大いなる自然に心奪われることでしょう。

 そして、日本海に面したところは【海の京都】とも呼ばれ、その中で特に有名なのが、この天橋立なのです。


「わあ! すごいきれいですわ!」


 木々が生えた一本道が美しい海を挟んでずっと先の山々まで伸びています。

 これはすごい!


「この場所を選んで正解でしたわ!」


 新婚旅行をどうするか――

 どこに行くのか? どんなプランにするのか? どこが面白そうか? リョコウバトさんと二人でガイドブックとにらめっこしながら話し合った日々が思い出されます。


「さあ! 早く行きましょ!

 お船に乗ってみたいですわ!」


 いいね! 行ってみよう!


――楽しい時間だった


――船の上で、海の風を感じたり


――二人でお団子を食べたり


――実際に天橋立を渡ってみたり


――この旅行のすべてが、喜びに満ち溢れているものだと信じて疑いませんでした


「ねえあなた! 今度は展望台に行きましょ!」


 おっけー

 こうして、私達はリフトの列に並びました。


「飛ばなくても上に行けるなんて、すごく便利ですわね」


 あ、リョコウバトさんはリフト初めてなんだ


「ええ! 楽しみですわ!」


 こうして、一人用の椅子が回ってきたので、順番に乗っていきました。



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展望台

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 リフトの感想は?


「なんか変にドキドキしますわね……

 自分の羽で飛んでないのに、地面に足がつかない感じがむず痒いですわ……」


 意外だね……私と同じ感想だ……


「あら? あなたには翼が生えていたのですね?」


 がくっ、とずっこけてしまった

 足がつかなくてむず痒いってところだよ……


「ふふ……」


 リョコウバトさんは珍しくも、したり顔で笑っています。


「早くそれに慣れて、二人で自由に飛べるようになるといいですわね!」


 私はリョコウバトさんと、二人で一緒に空を飛ぶ妄想をしました。

 最初に飛んだときは、ドキドキしすぎて楽しむ暇なんてなかったけど、慣れたらきっと楽しいんだろうな……

 リョコウバトさんのその言葉に、夢心地な気分で、そうだねと言いました。

 

 そして、二人で展望台に立ちました。

 私はこの光景を見た瞬間、自身から沸き立つ開放感によって、身震いしました。

 空は真っ青、海も真っ青、地平線に山々が並び、その美しい平行線に橋をかけるように、一本の道がつながっています。

 その壮大な自然の神秘に、人生でこれまでにないほど感動しました。


――リョコウバトさんと、ここに来てよかった


 私はその言葉をリョコウバトさんに伝えたかった

 ねえ!リョコウバトさ――





――リョコウバトさんは、泣いていました。





 でも、表情に悲痛さはありませんでした。

 なにか喜んでいるような……ちょっぴり悲しんでいるような……

 そんな様子で、展望台から見える美しい光景をただただ見つめていました。

 リョコウバトさんは、涙に濡れた頬を拭って、固まっている私にいつもの笑顔を見せました。


「さあ! 次に行きましょ!」


 ……うん、そうだね

 私は反射的にそう言いました。

 何で泣いていたのか……その疑問を口に出すことができず、ただただリョコウバトさんのそばをついてまわることしか出来ませんでした。



●第四話 リョコウバトさんとの新婚旅行 完

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