第ニ話 リョコウバトさんとの結婚
●第ニ話 リョコウバトさんとの結婚
結婚式の平均費用320万円――
式の費用からご祝儀を引いた自己負担額がおよそ100万円――
更に、婚約やハネムーン費用がこれに加算されると……
ぺーぺーの平社員に、いきなりこれを用意するのは難しいな……
「あなた、ご飯はどうしますか?」
胸がハート型のエプロンを身に着けたリョコウバトさんが尋ねます。
かわいい!
てかすでに新妻っぽい!
「まあ! 嫁入り道具を持ってきてて正解ですわ!」
リョコウバトさんもウキウキです。
ご飯はどうしようか?
なにか作れるの?
「ドングリの皿盛りが出せますわ」
ドングリ……皿盛り……
うん、二人でどこか食べに行こう!
「まあ! 楽しみですわ!」
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居酒屋
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行きつけの居酒屋で、豆料理を食べました。
どう?
ドングリじゃあ無いけど、食べられるかな?
「ええ! 美味しいですわ!
特に枝豆ってとても美味しいですわ」
口に合って何よりです
リョコウバトさんって、普段何食べてるの?
「ドングリを食べてますわ」
そのまま?
「ええ、殻を割って、中身を食べてますわ」
美味しい?
「ドングリは史上最高の食べ物です」
リョコウバトさんはえっへん、と胸を張りました。
かわいい。
「もし、私も料理が出来たら、嬉しいですか?」
リョコウバトさんが上目遣いで尋ねます。
も、もちろん! リョコウバトさんの手料理、すっごく食べてみたいよ
「ふふっ! それじゃあ私、頑張ってみますわ!」
楽しみにします!
そうして、二人の時間を過ごしました。
この時間は言葉にできないほど素晴らしいものでした。
結婚か……
リョコウバトさん、私も覚悟を決めたよ
結婚しよう。数年後になると思うけど、必ずしよう
「ああ……! とっても嬉しいわ!」
リョコウバトさんもとても喜んでるようです。
「でも……結婚はすぐにしましょう!」
え……?
でも今そんなお金ない……
「リョコウバト伝統の結婚式にすれば、タダで、時間もかかりませんわ!」
リョコウバト伝統……?
「場所を変えましょう。高いところは大丈夫ですか?」
まあ、少しくらいは大丈夫
そう答えると、リョコウバトさんは、私を後ろからぎゅっと抱きしめました。
密着した背中から、リョコウバトさんのぬくもりと、胸の感触を感じました。
ど、どうするのかな?!
「それでは、快適な空の旅へご案内しますわ!」
すると、リョコウバトさんは頭の翼を広げて、宙を飛びました。
地面からだんだん離れていき、目的地へ向けて前進しました。
か、風がすごくつよい!
「あの辺にしましょう」
そうして、降りた先は、木々あふれる山頂付近です。
驚きすぎて、心臓がドキドキしてる……
「空を飛び続ければ、そのうち楽しめるようになりますわ」
このドキドキは果たして、初めての飛行によるものか、はたまたリョコウバトさんの胸の感触からくるものなのか……
そうして、私とリョコウバトさん以外誰もいない山の中――
風は穏やかで、虫の鳴き声だけが響く静寂――
「私が結婚の約束事を三つ言いますので、それを復唱してください」
うん……
「結婚の約束
一つ、我々夫婦は共に道を歩む努力を惜しみません」
一つ、我々夫婦は共に道を歩む努力を惜しみません
「一つ、授かりし子は全身全霊で可愛がりなさい」
一つ、授かりし子は全身全霊で可愛がりなさい
「一つ、たとえ離れ離れになっても、家族だということを忘れません」
一つ、たとえ離れ離れになっても、家族だということを忘れません
私が言葉を言い終わると、リョコウバトさんは目を閉じました。
そして――
「ちゅ」
私とリョコウバトさんは、結婚しました。
そして私は、リョコウバトさんの旦那さんになりました。
●第ニ話 リョコウバトさんとの結婚 完
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