リョコウバトのお嫁さん

シャナルア

第一話 リョコウバトさんとの出会い

●第一話 リョコウバトさんとの出会い



ビューン


ズガーン


ビューン


ズガーン



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ホワイトハウス

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 大統領の執務室に、高級スーツを身にまとった男が慌てて入ってきました。


「何事だね」


 大統領は、尋常じゃない様子の国防長官に尋ねました。


「大変です。我が国が保有してる兵器工場群が次々と破壊されています」

「何だと! テロか?」


 国防長官が「そうです」とうなずきました。


「どこのテロ組織だ?」

「組織ではありません。

 犯人は例のやつです」


 大統領は「シット!」と悪態をつきました。


「要求は?」

「要求は二つです。

 他国への亡命を見逃し、身の安全を保証すること。そして……」


 大統領は、ごくりとツバを飲みました。


「おいしいドングリを一年分用意しろ、と」

「……」


 後の歴史書には、当時の大統領の発言として、こう記載されています。


「樫(カシ)の木も送りつけてやれ」、と……



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成田空港

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「落とされましたよ」


 ?

 後ろからきれいな声で話しかけられました。

 振り向くと、美しい女性が、自分のハンカチを持ち、私の方に手を差し伸べています。

 その女性は、髪の毛は黒髪の後ろを二つに結んでいて、頭頂部には小さな翼が生えていました。

 す、すみませんっ、ありがとうございます!


「ええ、どういたしまして」


 きれいな女性だなあ

 私はハンカチを受け取ると、そそくさと駅の方へ立ち去りました。

 しかし、女性も自分と同じ方向へ歩き出しました。


「あなたは日本人ですよね?

 これからどちらへ向かわれるのですか?」


 ええと、これから私の家に帰るところです

 これまで、実家へ帰省してたものですから


「まあ! 家族を大切にしてなさるのですね!」


 その女性は、フレンドリーな感じで話しかけてくれます。


「私は、リョコウバトと申します。

 アメリカから日本に来たばかりですわ」


 へぇ、外人さんか


「不躾かもしれませんが、道中の間、日本の事や面白い場所なんか教えていただいてもよろしいですか?」


 も、もちろん! リョコウバトさん!

 私はただのしがないサラリーマンですが、よろしくおねがいします!


「まあ、こちらこそ! うふふ、面白い方ですね」


 テンパって、変なことを言ってしまった……

 でも、こんなきれいな方に笑っていただいたなら、差し引きプラスなはず……

 こうして、私とリョコウバトさんは、移動しながらいろいろな話をしました。


「日本は素敵なところがたくさんあるのですね!」


 ええ、喜んで頂いて何よりです。

 これからどこに行くのか決めてるのですか?


「実はまだ何も決めてませんの。

 時間はあるので、来てから考えようと思いまして」


 そ、そうなんだ

 あの、このままだと私の家に着きますよ……


「……私の目的地、今決めましたわ」


 リョコウバトさんは、私に少し甘えた声で言いました。


「あなたの家に行きますわ」


 ええと、あのそれは何故?


「あなたと一緒に居たいから」


 ドキリと心臓が高鳴りました。


「ご迷惑でしょうか?」


 私はそんな事無いと、首を横に振りました。

 僕の家で良ければ、いいよ


「まあ……! ありがとうございます!」


 彼女の微笑みは、天使の微笑みでした。



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自宅

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「まあ、なんといいましょうか、あなたらしい部屋ですわね」


 私のアパートの一室に、私とリョコウバトさんがいます。

 もちろん、女性なんてこれまで入れたことなんてありません。

 うう……フィギュアとか漫画とかは隠しとけばよかった……


「いえいえ、好きなものはそれぞれ違っていいものです!

 それに、可愛らしい女の子がいっぱいいて、興味深いですわ」


 ……喜んでくれて何よりです

 とはいえ、先程より少し冷静になったことで、不安が湧いてきました。

 彼女は何者だろうか?

 金目のものを物色して泥棒でもするのだろうか?

 信頼させてから、私を騙して、詐欺でもするのだろうか?

 考えた挙げ句に、彼女に尋ねました。

 リョコウバトさんは何故、日本に来られたのですか?


「旅行ですわ……」


 彼女の言葉が少し弱く、泳ぎ気味の言い方でした。


「……というのは理由の一つ

 実は新たに住む場所を探していたのです」


 アメリカから?


「ええ、そうです

 あなたは聞いたことございませんか?

 リョコウバトはすでに絶滅したってこと」


 ……ああ!!

 そういえばリョコウバトは絶滅した動物じゃないか!

 じゃあ君は……?


「私はリョコウバト最後の生き残りですわ」


 マジか……


「リョコウバトの中で、私だけが唯一ビームを撃つことが出来たのです。

 そのおかげで、私だけ生き残ったのです」


 ビーム?


「見ていてください」


 そう言って、リョコウバトさんはベランダから外に出ました。

 そして、大きく口を開けて青空に向けました


「バトビーム!」


 すると、光の閃光が空に浮かんでいた入道雲を一撃で消し飛ばしました。

 横で見ていました私は、あまりの威力に尻もちをついてしまいました。


「これがビームです」


 す、すげぇ……


「まあ、お褒めに預かり光栄にございますわ」


 そんなリョコウバトさんは、私に近づいて言いました。


「こんな恐ろしい動物、あなたは受け入れてくださいますか……?」


 彼女の表情から、悲しみを感じました。

 きっと、受け入れてもらえるのか不安に思っているのかも……

 あなたの好きにしてください

 ……私と一緒に居たいって、リョコウバトさん言ってたじゃないですか


「ええ! そうですわ!」


 また、あの天使の微笑みを浮かべています。

 私の心も癒やされますなぁ


「それでは、私はあなたのお家に住まわせていただきますわ!

 不束者ですがよろしくおねがいします」


 こちらこそよろしくね


「それでは、私が日本に来た理由を説明しますわ」


 ?

 リョコウバトさんが日本に来た理由って、旅行とおうち探しじゃないんですか?


「そして、最後にもう一つ、重大な理由があります。

 私の結婚相手を探して、子供を授かることですわ」


 え?


「末永くよろしくお願いしますわ。

 優しい私の旦那さま♡」


 ええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!



●第一話 リョコウバトさんとの出会い 完

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