新作ゲーム

※注意※

まあ世の中にはファ○リーガイやポ○テピ○ックがあるし別に大丈夫だと思うけど、一応冗談の解らない頭でっかちの為に言っておく

ここに書かれてる事は質の悪いジョークなんで本気にしないでください





………………





ここは、「クロノスコーポレーション」。


宇宙人から銃で地球を守るシューティングゲームから、わたあめのような生物を育てる育成ゲームまで、様々なゲームを作っている会社である。


それこそ、某配管工の会社のような超大企業には及ばないが、それなりに評価され、それなりにアンチもいる。

そんな会社である。


そして、ある日。

夏の暑い日の事である。



「わが社の新作ゲームがまったく売れないので、関係者を集めて緊急会議を開く!」



クロノスコーポレーションの社長「政宗(まさむね)」が、緊急会議を開いた。


普段は飄々としている彼が、珍しく声を揃えての一言に、問題のゲーム「ラビリンストリガー」の開発スタッフ一同は、直ぐに会議室に集まった。



ラビリンストリガー。

それは、クロノスコーポレーションがつい最近発売した新作ゲームの一つ。

荒廃した時代を舞台に、人類を脅かす怪物との戦いを描く、狩猟ゲームの流れを組んだSFアクションだ。


ゲームバランスが最悪な訳でも、操作性が悪い訳でもない。

果たして、このゲームの何がそんなに問題だというのだろうか。



「まず、このゲームの魅力はなんと言っても美少女ヒロインだ、プレイヤーは彼女達と交流し、それぞれのエンディングを目指す」



ラビリンストリガーのウリの一つ。

それが、物語を彩る美少女ヒロイン。

いくら美少女なんかよりも硬派でしっかりとした中身が大事と言っても、やはりかわいい女の子が居た方がいい。


ヒロインは三人。


主人公の先輩で、面倒見のいい「ハナ」。

物静かでクールなお姉さん「ナオミ」。

天真爛漫で可愛らしい妹系「アイリ」。


この三人だ。

どれも最近の美少女事情を調査に調査を重ねて産み出された。



「で、その三人のヒロインが………」



政宗はホワイトボードに、三つの写真を張る。

それは………。



「これと」



ハナ。

ネイティブアメリカンの31歳。

スキンヘッドのレズビアン。

ビザが発行されず困っている。



「これと」



ナオミ。

中国とユダヤ系のハーフ。

肥満体が悩みの足が不自由な34歳。



「これの三人だ」



アイリ。

ヒスパニック系のヒゲの男。

ゲイの33歳。



別に、政宗はレイシストという訳ではない。

だが、美少女ヒロインと言われていた所に出されたのがこれなら、言わざるを得ない。



「美少女って言ったよね?!」



ビターン!

政宗は写真を叩きつけた。



「美かどうかは個人に任せるとして少なくとも少女ではないよね?!内一人はオッサンだしさ!何なの!?おねショタのタグで6つ子ニートのホモ小説あげる腐女子かテメーらはァァァァ!!」



政宗が吠える。

君ら美少女の意味知ってる?と。

プレイヤーがこんなヒロイン出されて喜ぶか?と。



「うう………うう………」



その時だ。

会議室の片隅から、すすり泣く声が聞こえてきた。

政宗が何だ?と顔を向けると………。



「き、君は………キャラデザの氷室(ひむろ)君!」



泣いていたのは、ラビリンストリガーのキャラクターデザインを手掛けた「氷室」。

少年雑誌の漫画でデビューし、様々なゲームやアニメで活躍しているイラストレーターだ。



「一体どうしたというんだ氷室君!」

「うう、実は………」



氷室はポツリポツリと語りだした。

美少女ヒロインを作るはずが、何故こんな事になってしまったかを。





………………





それは、ラビリンストリガー開発中の出来事。



「ウッシャアアア~~ッ!描くぜ描くぜ描くぜ~~~ッ!!」



ゲームの三人のヒロインのデザインを任された氷室は、ノリにノっていた。

それまで連載していた少年漫画は、客層の都合でイケメンとオッサンしか描かせてもらえなかった。



「やっぱりヒロインは巨乳だな!でもロリ枠が一番デカいというのもまたそそる!衣装もえちえちにして!ウェーヘヘヘヘヘヘ!」


久々に、可愛い美少女が描ける。

とびきり可愛い美少女を描くぞと、氷室はペンを走らせていた。


最高にハイになって、ヒロインの姿を描きあげてゆく。

その時。



「FF外から失礼します!」

「うわらば!」



バコォーッ!

突然棒のような物で殴り付けられ、椅子から転げ落ちる氷室。

何者だ?!と、殴った相手を見上げる。


そこに立っていたのは、虹色の服を着て、頭をアフロにした肥満体の女だった。

顔の構造で、なんとか女と認識できた。



「誰だお前は!」



氷室は、自分を殴った女を睨む。

いきなり、何をするのだと。



「私は………フェミニストだ!」

「フェミニストだと?!」



女は自らをフェミニストと名乗った。

そして驚いている氷室を見下しながら、言葉を続ける。



「なんだこのキャラデザは!未成年の上に胸が大きすぎる!気持ち悪い!こんな物を発表してはいけない!よって私が代用デザインを用意してやる!ありがたく思え!」



そう言ってフェミニストを名乗った女は、数枚のキャラクターデザインが描かれた紙を突きつけた。


そこに描かれていたのは、胸も尻も出ておらず、日本人の感覚では美人とは言いがたい、古いアメコミのようなデザインの女性キャラクター達。

そして、洋画のイケメン達を絵に落とし込んだような、男性キャラクターのデザイン。


少なくとも普段洋画を見るような女性には喜ばれそうなデザインだったが、ラビリンストリガーの主なターゲットは男性ユーザー。

このようなデザインはお呼びでないのだ。



「悪いけどラビリンストリガーは男性ユーザー向けで作ってるんだ!このデザインはお呼びじゃないよ!こっちは美少女を求められてるんだ!」



と、氷室は勇気を持って言い放った。

そこには、自分の手掛けたデザインに対する、プライドも含まれている。



「………つまり、私の要求を飲むつもりはないと?」

「当たり前だ!」



真っ正面から、フェミニストの要求を突っぱねる氷室。

すると、フェミニストはスウウーッと息を吸う。

そして。



「皆ぁ!!ここにレイシストがいるぞぉ!!」

「はぁ?!」



大声で、フェミニストは叫んだ。

すると。



「なんだって!」

「レイシストがいるのはここか!」



ぞろぞろと、フェミニストと同じように虹色服を着て、棍棒を持った集団が、氷室の部屋に入ってきた。



「レイシストを許すな!」

「差別を許すな!」

「ヘイトスピーチは魂の殺人なんだぞ!」



棍棒を振るい、意味の解らない言葉を吐きながら、氷室の部屋を破壊しはじめた。

買ったフィギュアやプラモデルが破壊され、集めていた漫画本は破られる。



「わああ!やめろ!やめてくれ!!」



氷室は自分の仕事に誇りを持っていた。

だが、自分のプライベートをこうも破壊されたのでは、もう折れるしかない。



「解った!要求は飲む!だからもうやめてくれ!!」



氷室が泣きながら叫ぶと、虹色の服の一団はピタッと破壊をやめた。

そして、項垂れる氷室を前にして、フェミニストがニヤニヤ笑いながら、一言。



「………よろしい」



これが、キャラクターデザインが美少女で無くなった理由である。





………………





氷室から事の巻末を聞かされ、政宗は驚きのあまり言葉を失っていた。



「俺が折れたせいで………ごめんなさい………ごめんなさい………」

「いいよ、いいんだ、あんな事をされて、耐えられる者はいない」



さめざめと涙を流す氷室を、落ち着かせるように宥める政宗。

政宗も、氷室のような趣味に理解はある。

故に、彼の味わった悲しみも苦しみも解る。



「社長!大変です!」



その時、会議室のドアを勢いよく開いて、政宗の秘書の「常磐(ときわ)」が入ってきた。

ひどく慌てているようで、空調のきいた社内でありながら、その額には汗が流れ、ゼエゼエと息を切らせている。



「どうしたんだ?」

「次々とゲームに苦情が!」

「何だって?!」



ラビリンストリガーだけではない。

それまで発売したゲームに、次々と苦情が殺到したのだ。

今まで、何もなかったのに。


狩猟ゲームには「動物虐待を彷彿とさせて子供の教育に悪い」。


RPGには「女性キャラクターの服装が過激すぎる、ゾーニングしろ」。


シューティングゲームは「銃がリアルすぎて子供の教育に悪い、配慮しろ」。


恋愛ゲームには「こんな女性現実にはいない、気持ち悪い童貞の妄想」。


電話で、メールで、SNSで、奴等は次々と会社のゲームを攻撃した。


どれも、まるで温室育ちがヒステリーを起こしたかのようなクレームだった。

これが、ラビリンストリガーのキャラデザに圧力をかけて変更させたフェミニストやその仲間達が、調子に乗ってやっている事は、政宗にも解った。


一歩下がれば一歩踏み込まれる。

そうして自由が無くなってゆく。


まさに、その通りだった。


もし突っぱねれば、氷室にそうしたように、奴等は自分達をレイシストだと言うだろう。

そしてそうなれば、クロノスコーポレーションの社会的信用は失われる。


もう、どうにもできなかった。



「………………もーイヤ」



政宗は、絶望し天を仰いだ。

何十年も前に自分が作った、クロノスコーポレーション初のゲームソフトのゲームオーバー時の台詞を漏らして。


社会的信用を失うか、ファンからの信用を失うかの二択を迫られていた。

まさに、どう足掻いても絶望しかなかった。





………………






そして、ラビリンストリガーの大失敗を引き金として、クロノスコーポレーションはその信用を地に………否、地獄に落とす事となった。


まとめブログはアクセスを増やす為にネガキャンし、SNSの公式アカウントには罵詈雑言が飛び、某動画サイトではゲイポルノの男優がクロノスの社屋を爆破した。


会社を滅茶苦茶にした原因であるフェミニスト達は、クロノス社のゲームを買う事はなかった。

脅しをかけて踏み荒らすだけ踏み荒らした後に、飽きて他のゲーム会社やアニメを殴りにいったのだ。



………クロノス社がその信用を回復するには、

五年後に発売された、ラビリンストリガーの内容を最初期の物に変え、一部設定を変更したゲーム「メテオセイバー」の発売を待たねばならなかった。

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