少女・Forth

 私には記憶がない。

 だから、彼のことを知らないのも当然のこと。

 勿論、私自身のことを知らないのも当然のこと。

 私に、名ができた。

 初雪、香恋。と、私は言うらしい。

 初めての雪。恋の香り。良い名前だ、と私は思う。

 どうやらそれが、私の生前の名前らしい。

 そして、彼は、そのことを知っていた。

 彼は、自分が私の元彼氏だといった。

 おそらく、本当なのだろう。

 私は生前、彼と共に過ごしていたのだろう。

 だから、望むなら。

 今は、彼と共にいようと思った。

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