第23話◇ 詩穂の日記◇11頁目
〇月✕日 ホテルにて③
おでこにキスされて目が覚めた。
まだ、時間は午前5時過ぎだ。
いつの間にか、腕枕で眠っていたみたい。
慶ちゃんが見ていて、わたしは顔が熱くなるのがわかる。
横目で見ると、ソファに、それぞれの部屋着とパジャマと下着が投げかけてあって、思わず布団で顔を隠してしまう。
あーもう、恥ずかしすぎる。
慶ちゃんの顔が見られないよ。
そして、ハッと我に返る。
昨夜は夢中だったし、慶ちゃんのことしか見てなかったから意識してなかったけど。
わたしの、このお腹……見られちゃったよね。
わたしのお腹には
全身の状態が悪かったので、術前に暫く、胆嚢内にドレナージというチューブを挿入して胆汁を排出する治療もしていた。
おへその下には大きめの傷跡(これは術中に必要になって普通より大きめに切らないといけなくなったらしいと聞いた)あと小さい傷跡二つ。もうだいぶ前だし、見せるわけでもないから普段は気にしていない、けど。
オバサンだけど、だから平気ってわけでもない。好んで見せたいものであるはずもなく。
加えて脂肪タプタプ、大きなお尻と大根足(こっちの方が問題か)も、わかっちゃったよね(滝汗)
がーーーん!!!
慶ちゃんの毛深さなんて全然大丈夫だよ。
サラサラの毛ざわり、気持ちよくてずっと撫でていたいくらいだったもん。
それがわたしときたら、コレだよ。よもやスタイル抜群!なんて期待は無かっただろうけど。
美熟女?なんかでも間違ってもないわけだし。
でも、ガッカリしなかっただろうか。
慶ちゃん、優しいからハッキリとは言わないだろうけど……。
ああ、電気、真っ暗にしてもらえば良かった。
そんなに何度も逢えるわけじゃないんだから、一回一回が記憶に残るのに、わたしのバカバカバカ!
心臓が跳ね上がる。
「詩穂さん、真っ白で柔らかくてすべすべで、すごく綺麗だよ」
慶ちゃんがわたしの肩に唇を寄せて感触を楽しむみたいに何度もキスしてくる。
キスされてる所が熱を持ったみたいに熱い。
わたしは上目遣いで
「ほんとに?」
と聞いてみる。
「ほんとだよ、すごく綺麗だ」
恥ずかしくて、でもすごく嬉しくて
もう一回
「ほんとにほんと?」
「勿論」
生真面目に慶ちゃんが答えてくれて
やっと
わたしも安心する。
まだ二人で裸のまま寄り添ってベットの中。
「しあわせ」
って、わたしが言ったら
「僕も」
って、慶ちゃんが言ってくれた。
そうして
「愛してる」
って。
単純かな……でも、その言葉を
慶ちゃんの口から聞いた時に、
色んな色んなことが思い出されたりして
何故だか涙が止まらなくなって。
後ろ向いたけど慶ちゃんには、お見通しで。
慶ちゃんは
「大丈夫」っていいながら、わたしの髪を優しく撫で続けてくれてた。
わたしは撫でられるのが、すごく安心出来て気持ち良くて、うっとりしながら、また、少しウトウトしたのだった。
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