第18話◆慶の独白(8)初めてのデート(夜)

バスで駅前に戻り、駅のコインロッカーから荷物を出した後、予約していたホテルに向かった。


時刻は17時半になるところ。

再度、電話でチェックイン時間を知らせておいたのは正解だった。手続きもスムーズに済んで良かった。


ここはフロント横がちょっとしたラウンジになっていて、朝食も時間を区切って、そこで、とる様になっている。朝食はバイキング形式でサラダバーとドリンクバーがあり、和風、洋風料理にデザートもあるようで、楽しみだ。


ふーっ、部屋に着いて荷物を下ろすとひと息。お疲れ様。


ふふっ!詩穂さんたら、子供みたいに珍しそうに、あちこちを確認したりしてる。

詩穂さんのこういう好奇心、嫌いじゃないよ。


なかなか旅行の機会がないからって照れて笑ってオバサンでゴメン!って謝ってたけど、大丈夫だって。

うんうん、僕もそんなに旅行慣れしてないからわかる。


部屋はこじんまりとしているけど、清潔感があって、ちゃんとアニメティグッズも揃っていて良かった。


当たり前だけど、ベットはダブル。

うう、いかん!

彼女の繋いだ手の柔らかさとかを変に意識してしまう。


とにかく、夕食だ!うん!まずは夕食!


お互いに貴重品だけ持ってから部屋を出る。

カードキーなので、そのまま、フロントに預けずに持っていていいのは面倒くさくなくて助かる。


ホテルの玄関を出て、二人で街へ。

もう、自然に詩穂さんと手を繋げる。

それが、嬉しい。

なんかオレ、中坊みたいになっちゃってるな(苦笑)


辺りはもう、暗くなってきていて、そんな中をネットで探したレストランまで歩く。


夕食、最初は、ちょっと豪華目なお弁当とか、惣菜を買い込んで部屋でゆっくり食べるのもいいかもって話してたけど、せっかくの初デートなんだからって事で、少し歩いた場所にあるレストランに決めた。


ここは洋食と創作料理が楽しめるお店らしく、今回は冒険するより、こっちにしてみようと看板料理の「ふんわりハンバーグ」のセットを二人で注文。

サラダとスープ付きでハンバーグソースが選べるのはいいな。

僕はデミグラスソース、詩穂さんは大根おろしを乗せた和風ソースを選んだ。


暫くしてホカホカのハンバーグがきた。

おお!美味うまそう!


二人で

「「いただきます」」


詩穂さんはどんな時でも

「いただきます」「ごちそうさま」

と手を合わせる。

食べ方も綺麗だし。

「癖なの」と笑っていうけど、こういうキチンとしたところ、いいなぁと思う。


それにしてもこの、ふんわり感。

でも肉の旨味もちゃんと感じる絶妙さ。

うんうん!看板料理だけのことはある!


僕は家で皿洗いはするけど、料理はあんまりしたことが無い。

母と妹がしてくれるから甘えているんだけど、食べることは好きだし、今度作ったりしてみようかな。


いかにも美味しそうに夢中で食べてる詩穂さんを見ながら、そんな事を考える。

この女性ひとを見てると、もっともっと美味しいもの食べさせてあげたいなぁとか思うんだよなぁ。ふふふ。


それにしてもこのレストランは大当たりだった。

次回来た時は、ハヤシライスやオムライスに挑戦するのもいいかもしれない。


季節の果物とアイスのデザートも口をサッパリさせてくれて、僕らは大満足で

「美味しかったね!」を連発した。


お店を出て、すっかり暗くなった外を歩いて

近くのコンビニで飲み物や、それにスルメや裂きイカなんかを買いこむ。

僕はお酒は飲めない。

詩穂さんは飲めるけど、別に無くても平気だそうだ。スルメは特別だって(笑)


手を繋いで、夜風にあたりながら、ホテルへの道を帰る。


詩穂さんが前を向いたまま、ギュッと手を握った。ギュッと握り返したら、恥ずかしそうにうつむいた。


可愛いひとだなぁ

たまらなく愛しさが込み上げてくる。

こんな気持ち、初めてかもしれない。

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