第16話◆慶の独白(7)初めてのデート(夕方まで)
時間は12時半を少し過ぎたところだ。
ホテルのチェックイン時間は15時だったけど、電話で少し遅れる事を伝えていたから大丈夫。
もし、何なら、着く少し前に、今から行きますと電話を入れておいてもいいし。
移動時間をちゃんと考えてある。こういう時間配分は得意なんだ。
まず、大きい書店ビルをゆっくりと見てまわることにする。詩穂さん、本大好きだもんな。
その後、休憩を挟みながら雑貨屋と模型屋を巡ることにしよう。
今回、できるだけ、無理せずに、のんびりと楽しむようにしようねと話していた。
行きたい所は沢山だけど、無理はさせたくない。
やっぱり初めて二人きりのデートの緊張もあるだろうから尚更だ。
ここの書店は階ごとにジャンルで分類されていた。
日頃、小さな所では見かけないような、かなりマニアックな本もあり、詩穂さんは目をキラキラさせて夢中になっている。
ここは、1階は、雑誌と文具。2階はゲーム類と関連の本、3階は小説類が新刊と古本に分けられ。4階は漫画、コミック類が同じく新刊と古本に分けられている。
一応、1、2階をさっと見てから、3階へ。
しかし、詩穂さんの本の守備範囲は広いなぁ。本好きだけに装丁も気になるみたいで、あれこれと説明してくれたりする。
夢中になれるものがある人は魅力的だ。
古本コーナーで、オズシリーズの第六弾「オズのチクタク」佐藤高子訳を見つけた詩穂さんは、めちゃめちゃ喜んでいた。
胸に抱えるようにしてレジに持って行く。
ずっと探していたんだそうだ。
うんうん、良かった!
漫画コーナーでも好きな作家さんの話をして盛り上がり、画集、イラスト集を見たりして、一階に降りた所で僕の好きな模型関係の雑誌を。
パラパラみながら詩穂さんにプラモの事を説明すると、熱心に聞いて質問したりしてくる。
女の人には退屈かなと思ったんだけど、好奇心旺盛な詩穂さんには新鮮な分野だったみたいだ。
得意分野の説明を熱心に聞いて貰えるのは嬉しい。
そういえば、ホテル近くの駅前にも新刊専門の、これまた大きな書店があるようなので、余裕があれば明日にでも行ってみよう。
ここで、トイレ休憩を入れる。
少し離れた場所のベンチの休憩所で飲み物の自動販売機から冷たいお茶を買って詩穂さんに渡し、水分補給しながらちょっと休憩。
喫茶店に入ることも考えたけど、とりあえず足を休めたかったし、ちょっとの休憩なら、この方が気楽かな、と。
正直、詩穂さんの反応は気になった。
貧乏くさいとか思われるのは嫌だなって。
でも、詩穂さんは当たり前に
「ありがとう!」
って、お茶のペットボトルを受け取ってベンチに腰をおろした。
僕も横に座って、仲良くお茶を飲む。
「あー冷たくて美味しい!生き返ったねー!」
詩穂さんが屈託のない顔して笑う。
気を遣わずにこんな風にいられるっていいな。
書店を出て雑貨屋へ
詩穂さんは小さなクマのマスコットが気に入ったようで、
「これ、買ってくるね!」
と、会計に向かった。
僕は追いかけて会計をして、プレゼント用にと包装してもらった。
「はい!」
詩穂さんに渡すと、ものすごく嬉しそうに
「ありがとう!」
と受け取ってくれた。
「でも、どうして、そのクマのマスコットが良かったの?」
と、聞くと、
イタズラっ子みたいな顔をして
「秘密!」
と、笑った。
模型屋でも、詩穂さんは好奇心旺盛で、色々聞いてくる。ガンダムはリアルで観ていたようで、ガンプラにも興味があったみたい。
時間の関係もあり、ぐるりと見ただけだけど、話が弾んだ。
外に出ると、
もう日が暮れかかっていて、時間はもう、17時になろうとしていた。
ホテルに再度連絡をして、チェックインが17時半ぐらいになることを伝えておく。
これで、安心。
それにしても、こんなにリラックスできて楽しいのは何年ぶりだろう。
二人でいると時間は、あっという間に過ぎていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます