第15話◇ 詩穂の日記◇7頁目

〇月✕日 初めてのデート(夕方まで)


ラーメン屋さんから出たら時刻は12時半を少し過ぎていた。

ホテルのチェックイン時間は15時だったけど、電話で小一時間遅れる事を慶ちゃんが伝えてくれてるから(ホテルの方は15時以降なら時間はそんなに気にしなくて大丈夫ですよと、言ってくださったらしい)安心。


移動時間を加味してもまだ大丈夫なので、まず、大きい本屋ビルをゆっくりと見てまわることにする。

その後、休憩を挟みながら雑貨屋さんと模型屋さんを巡ることに。


今回、できるだけ、無理せずに、のんびりと楽しむようにしようねと話していた。


慣れない長旅(わたし達にとっては)だし、ゆっくりと二人で過ごすことが目的だから。


本屋さんは階ごとにジャンルで分類されていた。

日頃、小さな所では見かけないような、専門的なマニアックな本もあり、わたしは夢中になってしまった。

最近は、体調のこともあり、ゆっくり本屋さんで選ぶ機会が減っていたけど、元々、こうやって、ブラブラと見てまわるのが大好きなのだ。


ここは、1階は、雑誌と文具。2階はゲーム類と関連の本、3階は小説類が新刊と古本に分けられ。4階は漫画、コミック類が同じく新刊と古本に分けられている。


ホテル近くの駅前には新刊専門の、これまた大きな書店があるようなので、これは余裕があれば明日にでも。


本を見ていると、わたしは嬉しくてついついお喋りになる。


「あ!この本、読んだことある?独特の世界観が好きで……それに新刊本も装丁が素敵だったんだけど、ほら?文庫本の装丁も好みで、つい、持ち運んで読む用に文庫も買っちゃったの!」


いけない、つい、はしゃいでしまった。

声は抑えているとはいえ、いい歳して、と思われてしまったかな……。

そーっと横を見ると、慶ちゃんはニコニコしてた。良かった。

でも気をつけなくっちゃ。

流石に、いい歳をした大人なんだから。ね。


古本コーナーで、なんと、オズの魔法使いのシリーズ、第六弾「オズのチクタク」佐藤高子訳を見つけて狂喜して購入する。

このシリーズ、昔、出る端から購入して読んで、大切にしていたのだけど、引越しなどで、いつの間にか散逸してしまったのだ。

オズシリーズは復刊しているけれど、この挿絵とカバーイラスト(新井苑子さん)の本は古書コーナーでもなかなか見かけずに探していたので嬉しさもひとしお。


漫画コーナーでも好きな作家さんの話に花が咲き、画集、イラスト集を見たりして、一階に降りた所で模型関係の本をパラパラと。

慶ちゃんの解説を聴きながら、見ていると面白い。

わたしは知らないことを教えて貰うのが好き。新しい世界が開けるから楽しい。


ここで、御手洗トイレ休憩。

慶ちゃんは絶妙のタイミングで、さりげなく言い出してくれるから助かる。


少し離れた場所にベンチの休憩所と飲み物の自動販売機があったので、冷たいお茶を買って休みがてら水分補給も。


貧乏くさい?そんなミエがいらないのは有難い。その度に喫茶店探して入るよりも、ちょっとの休憩なら、この方が気楽。


まあ、こういうのは価値観が同じじゃないとキツイのかもしれない。

ケチ!とか貧乏くさい!とか思う人に文句いう筋合いもないし。

結局、どこに拘って、どこには拘らないっていう相性なんだものね。


気を遣わずに、趣味や価値観が同じ人とする、お喋りは本当に楽しい。


雑貨屋さんでも慶ちゃんは急かさずに、わたしの見る時間を、ゆっくりとってくれる。

ここで、わたしは小さなクマのマスコットを買った。慶ちゃんにちょっと似てたから。


会計に並んでたら慶ちゃんがプレゼント用にと包装してもらってお金を出してくれた。

「はい!」

と渡してくれて

その気持ちがすごく嬉しかった。

「ありがとう!」

ってお礼を言って、大切にカバンに仕舞った。(これは今でもわたしの宝物)


模型屋さんで慶ちゃんに色々聞きながら、見てまわって外に出ると、外の景色はもう夕方

になっていて……。


楽しい時間は、どうしてこんなに過ぎるのが早いんだろう。

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