第9話 ◇ 詩穂の日記◇4頁目
〇月✕日 初めてのデート(朝)
「おはよう!今、起きたよ!」
慶ちゃんからのメール。
「おはよう!わたしも起きたとこ」
メールを返した後、
前夜から緊張のあまり一睡もできないまま、朝を迎えたわたしは、洗顔して鏡を見て、ガックリしていた。
そうなのだ、わかっていたことじゃん。
この歳で寝不足はダメなんだって。
ううう……。でも仕方ない。
まだ、出かけるまでに時間はあるから、最後の足掻きでパック?なんぞをやってみる。
美容マスクと書かれたパッケージを開けると、なかなかに効きそうな美容液たっぷりのマスクが。早速、顔に装着。
起きてきていた息子から「おはよう」と声をかけられたので、振り向いて「おはよう!」と答えたら、ビックリされて飛びのかれて、ちょっと傷つく。クスン
「ゴメンゴメン!急だったし、母さん、そういうのしたの見たことなかったからさぁ」
とのフォローを入れてくれたので、許す!
今朝の母は寛大なのだよ。ふふふ。
とにかく忘れ物がないように。
一泊だから、そんなに荷物は重くないはずなんだけど、何しろ薬だの、ホットフラッシュで汗をかくから次の日の着替えと別にTシャツもパジャマ代わりにする分を含めて用意しておかなきゃだし。
お金は予備を分けて旅行カバンの底に入れる。
持ち歩く為の小ぶりのリュックバックにお財布など貴重品、綿手拭い数枚、ポケットティッシュなんかを入れて旅行カバンの中に。
そうそう、ペットボトルの水も忘れちゃいけない。脱水症状を起こしがちなわたしは、いつも500mlのをホルダーに入れて持ち歩くようにしている。
当日慌てないようにと、前日に切符を買っておいて良かったと思いながら再確認。
そうこうしているうちに美容マスクを剥がす?時間になる。
どうかなぁ〜
そーっと鏡を覗き込む。
うん、何だかね、心なしかお肌元気になった気がするよ。
うんうん!そういうことにしとこう!
下着もわたしの好きなラベンダー色のちょっとオシャレなもの。
いいよね?少しレースがついててもオバサンだけど、このくらいはいいよね?
髪を梳かし、整える。
こういう時にショートはラクチン。
数日前に美容室にも行ってきたから、バッチリだ。
服は迷ったけど、白いブラウスにモーブピンクの薄い透かし編みカーディガンを羽織ってネイビーの長めのスカートにした。
胸元には、わたしのお守り、水晶のペンダント。
いつもは、もっぱら、ジーンズなんだけど、
デートの時くらいはね。
靴は、ブラウンのフラットシューズ。
踵の高いパンプスは昔から苦手なんだ。足が痛くなって迷惑かけちゃうといけないもんね。
それにしても厄介なのはお化粧。
普段のわたしは、せいぜい日焼け止めを塗って薄く口紅をつける程度。
お化粧は上手くないし、あんまり変わり映えもしない。
でも、少しでもと、いつもの日焼け止めを塗って、軽く白粉を叩いた。頬紅も少し。
一応、二重なのに、地味な印象になるのはこれが大きい。
でも無いものねだりをしてもしかたないし、アイメーク?は技術不足で慣れない人間が下手にすると失敗の元になりそうだから、この辺で。 ふう……。
カーディガンに合わせてモーヴピンクの口紅をひいて……出来上がり。
鏡を見る。
こんなもんだよね。
前回の初顔合わせの時と同じように自分なりに気合いを入れたつもりだけど。
シミとソバカスは少しは目立たなくなったかな?
そうこうしているうちに慶ちゃんから、メールが入る。
「今から家を出て、駅に向かうね」
慌てて返信、
「わたしも今から家を出るとこだよ」
全身の鏡で髪とお化粧と服をチェックする。
確認を済ませてた旅行カバンを持って、靴を履いて。
「行ってきます。あとはお願いね」
と、父と息子に声をかける。
一応、煮物とキンピラごぼうに、ほうれん草のおひたしは冷蔵庫に入れてある。
息子用にはビーフシチューもお鍋の中にある。ご飯はタイマーでもうすぐ炊きあがるだろうし。
「心配するなって、それよりゆっくり楽しんでおいでよ」
と笑顔の息子に、もう一度、
「ありがとね。行ってきます!」
と声をかけて、
わたしは玄関のドアを開けた。
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