世界一簡単な必殺技

 竜巻錐揉み!ハリケーンドライバー


 俺は剣を突く。しかし巨大な岩は傷一つつかない。


 断鉄斬り!アイアンカッター


 俺は力を込めて剣を振り下ろす。衝撃波が岩にぶつかる。しかし岩はビクともしない。


 クソっ、全然切れない…… まだまだ俺の実力が足りないのか。俺は唇を噛む。すると、日に焼けた白髪混じりの男が俺に声をかけてきた。


「あー、そんなことしても岩は切れないよ。無駄な動きが多すぎるから」


 このオッさん、もしや変にウンチク垂れる剣豪もどきか? 俺は疑いに満ちた視線を送る。しかしオッさんは俺の視線など全く気にせずに話を続けた。


「僕の言う通りにやってみな。簡単だから。しかもびっくりするほど威力出るから」


 ホントか? あきらかに怪しい…… しかし、物は試しだ。一回だけ付き合ってみよう。


「教えてください。どうすればいいですか?」

「うん、まず中段に構えて」

「はい」


 俺は剣をヘソの高さまで持ち上げる。するとオッさんは衝撃の一言を放つのだ。


「剣から手を離して」

「え? 手離したら、剣が落ちちゃうじゃないですか?」

「そう、落としちゃって」


 ヤバい、微妙な空気が漂っている。早く済ませて帰っていただこう。俺はおもむろに剣から手を離した。案の定剣は真下に落ちていく。


 ピシッ、ピシピシピシッ


 岩に亀裂が入った。


 ビキビキビキビキビキビキ、ズシャーン!


 無数の亀裂とともに岩は砂山と化した。


「簡単でしょう。しかもすごい威力。これこそヤマモト流秘技 簡単重力落としイージーグラビティだよ」


「あなたもしやソードマスター ヤマモト……」


 俺はいろいろな意味で開いた口が塞がらなかった。



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