闘え!サンマーメンの必殺技

「ハッ!ハッ!ハッ! ハッハッ!」


 私は何度も拳を突き出す。何度突いても、私の悩みは晴れない。私は正拳突きをやめ、巻物を広げた。巻物にびっしり埋められた文字。しかし、巻物の最後の部分には何も書かれていない。


 この空白の部分に奥義が記されているとお師匠様はおっしゃった。闘虎極意書をお師匠様から受け継いでから10年。極意書に記された48の必殺技はすでに極めた。しかし、空白部分、この部分の意味がまだわからないのだ。


「お師匠様、サンマーメン様!そろそろお昼にしましょう!」


 小さな少年が饅頭を持ってやってくる。すると大男が少年を背後から捕まえた。


「ギョーザ!」

「ガハハ、貴様が超神拳法伝承者のサンマーメンだな! 小僧の命を救いたければ、闘虎極意書を俺に渡せ!」


 やはり、そうきたか。私の闘虎極意書を狙う輩は数多くいる。いつもは軽く叩きのめすのであるが、今回はギョーザが人質に取られている。下手なマネはできない。私は身構えたまま動けずにいた。


「ホラホラ! 正義のサンマーメン様なら子供の命を犠牲にできないよな!」

「お、お師匠様……」


 男は太い腕でギョーザの首を絞める。ギョーザは必死に耐えているが、虫の息だ。


「仕方ない」


 私は巻物を放り投げた。男は巻物を拾い上げる。


「ガハハ! これで俺も世界最強の男だ!」

「セイヤ!」


 男の顎が上にあがった。男の腕の力が緩んだスキにギョーザが男の顎を蹴ったのだ。


「このガキャー!」


 男は怒りに任せてギョーザに向けて拳を振り下ろそうとする。


「ギョーザ!」


 私は男に届かない間合いから拳を突き出した。


 48の必殺技の一つ 五十歩百歩神拳!レンジレスパンチ


 男は石像のようにピクリとも動かなくなった。


「お師匠様!」


 ギョーザが私に駆け寄る。私は巻物を拾い上げて、懐にしまった。




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