第25話 運命

「それじゃあ、まず宿主様のご年齢は三十歳以上である。はいかいいえで」


憤怒はそう言われ、宿主の顔を見る。

体は細く髭を生やし頭ははげている。

憤怒は確信して自信満々にはいですねと答えた。


「わかりました!それじゃあ私はいいえにしますね!それじゃあ宿主様、答えを!」


宿主は両方の顔見合わせて、


「すまんな、背の高いお嬢さん、俺はこう見えて28なんだ」


「イヤったー!まずは私の一勝ですね、お・ね・え・さ・ま♡」


メイドは万歳をして私に擦り寄ってくる。

憤怒はイラッとして宿主に向かって思わず顔近づけ、


「あなた、嘘ついてないですよね?」


と言って睨み付ける。

それは一匹狼のように恐ろしく、赤く光っている。


「嘘じゃないさ!おっかない嬢さんだな」


「コラー!脅しなんて反則ですよ!反則!ほら次お姐様の番です!」


憤怒は舌打ちをして、彼女の言う通りに次質問を考える。

そうして、周りにいるビールを飲んでいるお客らを眺め、


「あの人が次に飲むのはビールですね、私ははいでいきます」


指をさしたのはビールを飲みあっている人間らの一人である。


「それじゃあ、私はいいえで」


それだけを言うと、二人はその人物を凝視する。

その人物はあろうことか目の目にあるパンに手をつけようとしていたのだ。


「はあ?」


憤怒、思わず口に出る。

なんでさっきまでビール飲んでた奴が、パンを食べようとするんだよ。

その視線と威圧に声がそのパンを手をつけようとした人間に伝わったのか、急に身震いをしてこっちを一瞥して、その眼光に鹿の如くビビり始めた。


「お姐様イカサマですか?」


「うるさい、黙れ」


「ええ・・黙れとか言われた・・・ぐすん」


その人物は身に覚えのない恐怖に怯え、一生懸命考えたのだろう。

そうして、手を出したのはビールであった。(彼がビールを選ばなかった場合、きっと彼に明日は無かった)


「よし!」


憤怒はガッツポーズをする。


「やっぱ、イカサマじゃないですか!」


「へえ、根拠でもあるんですか?」


煽りだす憤怒に、ギャーギャー喚くメイドの少女。

お互いに1対1と同点である。


「もう、わかりましたよ、それじゃあ!次が最後です・ね・・・?」


メイドは急に硬直した。したかと思えば、メイドの少女の口角が急に上がる。

憤怒はその笑いに見覚えがある。彼女が嫌う同業者の、あの人外特有の狂気じみた気色の悪い笑いである。

憤怒は怪訝に思い、眉を潜める。


「それじゃあですね、あの道にいる三人で会話している人たちがいるじゃないですか?」


メイドの少女はが指をさしたのは雑談でもしながら歩いている女性たちである。


「一番奥のあの人、死にますよ」


憤怒は目の前の人間の、いや目の前の魔女の言い分を疑った。

しかも「死にますよ」って・・・まるで答えを言ってるようじゃないか。


「何を・・・言ってるんですか?」


「はいかいいえ、早く選んでください。あ、もちろん私は『はい』ですよ!」


「そ、そんなのいいえに決まっているじゃないですか?!」


ぎゃーーー!!


急に悲鳴が聞こえたかと思えば、一番奥の女性が背中にナイフを刺され前に倒れる。

その後、後ろから襲ってきた男は馬乗りになり刺したナイフで彼女の顔面をめった刺しにする。

周りの女性が引き剥がそうとするが、女性の腕力ではどうにもならない。

呆然としていた周りの男たちがやっと入ってきたことでやっと引き剥がすことでき、遅れてやってきた衛兵が男を押さえ込んで何処かに連れていった。

きっと刺された女性の顔は見るも無残だろう。

他二人の女性は刺された女性を見て、涙を流し、身を寄せ合っている。

他の烏合の衆もあの残虐なる光景に驚いて声も出せなくなっている。

憤怒でさえも今のこの光景、状況に目を大きく開けている。


「ふーん、なるほど、きっとあれは痴情の縺れですね。いやーやっぱり人の死は儚いものですねー」


この女を抜きにして。


「あ!やったー!私の勝ちぃー!いいですよね!お姐様!」


憤怒は彼女を見て、眉を潜めて睨み付ける。

正直、吐き気がするほど嫌だったが、勝負に負けたのも事実だし、何よりこの女にぐちぐち言われると思うと癪だったので、憤怒は舌打ちをして、


「どうぞ、ご勝手に」と言った。



「わーい!やったー!それじゃあ、いきましょいきましょ!」


と言って憤怒を引っ張って二階に連れて行くのである。


「あ、あとですね」


メイドの少女が憤怒を引っ張りながら言うには、


「私の名前はトートと言います。以後お見知り置きを」


そんな聞いてもいない名前を憤怒に言ってきた。

当然、覚えるつもりもないし、なんでこのタイミングで名を名乗ったか意味不明だったが、トートか、なるほど嫌な偽名だと憤怒は妙に納得した。





<<<<<<<<<<後書き>>>>>>>>>>>


すみません、遅くなりました。

読了、ありがとうございます!

突然ですが、お知らせです。設定の不具合により一部シナリオを変更します。

続きはこれかも書くつもりですので、出来るだけこれからの展開との不整合のないように調整します。

これからも頑張るつもりなので応援してください。

















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