第23話 狂った笑い
<<のたうち回ってそれからそれから<<
「それでもう一度聞きますが、あなたは魔女なんですね?」
「ハイ、ソウデス・・・ダカラ、ゲンコツダケハ、モウヤメテクダサイ」
あれからと言うもの、この女、飽きずに何回も反抗してきたので、彼女の頭には無数のたんこぶが作られることになった。
憤怒はこれに対して別に悪いとは思わないし、可哀想とも思わない。
まず、彼女の自業自得だし、彼女が今、涙が枯れるほど泣いていて、目が赤くなっているところを見ても罪悪感などまるで感じない。
「それでもう一つ質問なんですが、あなたはどこの魔女ですか?」
この質問はメイド服の魔女の所属を聞いている。
無所属、または七人の魔女のどこかという解答が出てくるはずである。
そして、彼女が言ったのは、
「私は嫉妬です」
憤怒はその女を睨みつける。
「ほう、なるほど、私を殺しに来たと言うことですか?」
「いや、ちがっ」
「だから、私の近くでわざとナンパされるフリをして、私に近づいて殺そうとしたと、なるほどなるほど」
「待ってください!何か誤解してませんか?別に私はあなたを殺すつもりなんて毛頭ないんですよ!」
「黙りなさい、あなたの所属が嫉妬の時点で問答無用」
メイドの少女が否定しようとするが、それを憤怒は無視する。
「うふふふ、さーてどんな風に殺してあげましょうかねぇ?」
その笑いはみづからの復讐が果たせるという快楽から生まれる狂気を宿し、冷静さと理性をなくし、このものを利用しようという考えさえも吹き飛んでいる。
目の前の少女はもう自分の最期を予感したのか狂ったように笑っている。
そうして憤怒は、彼女の頭に右拳を振り下ろしたはずだった。
「アハハ!アハハ!な・ん・ちゃっ・て」
憤怒の振り下ろした引導は狙いを右にずらして虚空を捉え、憤怒は体勢を崩して右側に転ぶ。
その隙に彼女は背後へと回り、「やめた方がいいですよ!時間の無駄です!」と煽ってくるのだ。
そんな余計なことをするもんだから、憤怒はますます血圧が上がっていき、一心不乱に殴り込んでいく。しかしながら、その全てが当たらない。華麗に交わされていく?いや、当たらないと表現するべきだろうか?
殴る蹴る貫く引っ掻くなどといった致命傷になりうる攻撃を全てかわしていく。
理性が蒸発している憤怒はその乱撃を何時間も行い、疲れて膝を屈するまで続けたのである。
「ほらほら、私も疲れてきましたよ〜、もう終わりにしましょうよ〜、お姉様がものすごく執念深い性格なのはよくわかりましたから」
「うるさい!!」
憤怒は怒鳴りつける。
汗でローブが濡れ、喘ぎ声を上げて、もうくたくたな様子。
(ああもうこの女むかつく!!!、どうして当たらないんだ?ちゃんと狙っているはずなのにぃぃぃ!!何よりも避けている最中のあの、人を小馬鹿にする煽りと態度。むかつくむかつくむかつくむかつく!!!)
このように憤慨する憤怒であった。
「それに、私は確かに所属は嫉妬ですが、嫉妬その本人やその本拠地をも知らないような末端のメンバーですから、お姐様に恨まれる筋合いは全くないんですよ!」
そう言われ、憤怒はこの勝負になにかが価値があるのだろうかと、考え始める。情報にもならない利用する価値もない、そもそもこのような、人のこと苛立たせるだけのコンポツ小悪魔を殺しても復讐にはならない。それにそのポンコツに今まで誰が踊らされてきたのか。
憤怒としてのプライドを踏みつけられる屈辱とこれがなんの意味にもならないことさえも予想できなかった犬と同じくらいの自分の低能さに、恥ずかしさと怒りが混ざり合って気づいた時には頭を抱えて「あああああああああああ」と叫んでいた。
「全くぅ、お姉様って凶暴だとは聞いていましたけど、意外とかわいいところもあるんですね」
「覚えておきなさいよ、あなた・・・」
こいつは絶対にミンチにすると心に誓い、そこから尻尾巻いて逃げたのである。
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