第22話 メイド服の少女

憤怒が考えている途中、この少女は明るく元気よく、お辞儀をしながらお礼を言ってきた。

大変結構なことだが、生憎、憤怒はこのような元気だけが取り柄の人間が誰よりも嫌いだ。

ものすごく捻り潰したくなる。


「ハンカチ持ってません?」


憤怒は手の平を差し出し、苛立ちが募っているせいかきつい言い方になる。

それに対してメイド服の女といえばキョトンとした顔をして、ポケットからハンカチを取り出し憤怒の手の平に素直に渡した。

憤怒はもらったハンカチにあの男の皮脂を塗り込むように拭いていく。


「そういえばお姉様はどちらに行かれるつもりだったんですか? 」


憤怒は右手を拭きながら、


「そのお姉様という呼び方をやめいただけませんか? 馴れ馴れしい」


「そう言わないでくださいよ! お姉様! 私はあなたを慕っているのですから! 」

慕っている? 何を言っているんだ、この女。


「慕っている? 私はあなたを知りませんよ? 」


「ええ、当然です、知らない方が当たり前なんです」


憤怒は怪訝に思い、考えを巡らすが見当もつかず、まず憤怒はこのように質問する。


「一応確認ですがあなた魔女ですよね?」


「へ?」


メイド服の女ははたまた小動物のような純粋無垢な顔でこちらを見て、


「違いますよ」と言った。


憤怒はその瞬間、彼女の首根っこを右手で掴もうとしたが、あと少しと言うところでこのメイドはその魔の手から避けた?いや、外した?

メイド服の女はびっくりして離れようとして地面に転び、私に向かって喚く。


「ちょ、ちょっと何するんですか!?危ないでしょ!?」


「何するんですか?ですって?あなたがそんな見え見えの嘘をつくからですよ」


この女が魔女であることは最初からわかっていた。彼女が魔女かどうかの証拠など全くないが、この女にはゾッとしていて、気色の悪い何かを持っている。

女の勘ならぬ、魔女の勘ーーただの同類嫌悪だがーーがそう言っているのだ。

だから、彼女は関わりたくなかったのだ。

同業者を嫌う彼女にとって、同じ穴の狢と関わることは決してしたくなかったのだ。


「私はですね、人に嘘をつかれるが嫌いなんですよ。相手が魔女なら尚更に」


彼女は今にもブチギレそうと言うかもう切れている。

彼女は首を鳴らし右手をポキポキ鳴らしメイド服の魔女の方に近づいていく。

メイド服の魔女はこちらを涙目で見ており、土の上で全身をガクブルと震えていまするせいで起き上がれないらしい。


「わかりましたよ!わかりましたよ!はい!はい!嘘ですごめんなさい!ただのかわいいかわいいジョークじゃないですかぁ!」


「そして、私はそうやって冗談と言って開き直る人間はさらに嫌いなんですよね、死にます?」


「わかりました!今からのあなた様の質問に対して私は一切嘘をつきません!あなたのどんな質問にだって答えます!だから、お命だけは御命だけはお見逃してくださいぃぃ!!」


と言って彼女は天を仰ぎながら泣いてしまった。

溢れ出す涙は滝の如く、彼女の襟はぬれてしまっている。

そんないたいけな少女に対して憤怒は黙ってそのメイド服の魔女の頭にゲンコツ一発振りおろす。

すると彼女は頭を押さえて、痛っいたと言いのたうち回る。

もちろん、手加減はした。していなかったら彼女の頭蓋骨は割れている。


「ひどいですぅ!この人でなし!人外鬼畜!バーカバーカ!」


「ほぅ、まだ足りないと?」


「ヒィィぃぃぃ!!」


そうして、その涙のメイドっ娘に2つ目のゲンコツが作られることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る