挿話 夢 (2)

「ほお、魔女の才能ですか? 」

下手くそな画家が描いたような絵をそのまま顔に貼り付けた、少年のようでどこか違う何かが少女の前に現れた。

姿形は少年のように見えるが、声に子供らしさなど微塵もなく、むしろ大人らしい太い声をしていて、服は貴族風のチュニックを着用している。

「?」

少女は何を言われているのか分からず、怪訝な顔をする。

「貴方様は魔女になるべくして生まれた存在、ということですよ」

と分かりやすく言ったつもりらしいのだが、少女はやはり分からないらしくいまだに怪訝な表情をする。

「ああ…貴方様はここにいるのが相応しい」

そう言われると、少女は幼女にしてはあまりにもハキハキしていて思慮深そうな声で、

「わたしは、兄さんと行きたい 」

と言うと、すぐさまその何かは、

「そこは、本当に貴方様とって、居場所と呼べる場所ですか? 」

「…」

少女は黙るしかなかった。

その質問に対して「はい」と言えるほどの待遇を受けておらず、少女が生まれた途端に母は体調を崩し死亡、それを見た叔母は少女を煙たがって近寄りもせずに、「悪魔」と小言を言ったことさえある。

父も父で少女にはよそよそしかった。

「居れば邪険される、そんな場所にいたら貴方様の身が危険だ、それに…

貴方様のお兄様に、これ以上迷惑をかけられるほど貴方様も厚かましくはないでしょ? 」

少女はドキッとする。

図星だからだ。少女は兄を一人にすることが気がかりでありながらも、自分がいたら迷惑ではないかと不安で、それに兄と一緒にいる時でさえ、


母を殺したように、兄も殺してしまうのではないか。


と思っていた。

兄は優しくて、いつも遊び相手になってくれた。

少女が「どうして、わたしなんかといるの?」と聞けば、「お母さんに頼まれたんだ、●●●●を守ってほしいって、それにこんな可愛い妹を一人にする兄なんていないよ」と言ってハグされた時があった。

その時は動けなくなるくらい感動した。

涙が溢れるほど嬉しかったが、少女は元来、感情を表に出すのが非常に苦手なために、涙は出てこなかった。

「ここにいなさい、そうすればあとは私が全て片付けますから

さあ、何も迷うことはない。ただ身を預けてくれれば良いのです」

何かは少女に優しく滑らかな問いかけてくる。

少女は決めあぐね、どうすればいいのかでさえわからない。処理するものが多すぎるのだ。

そうこうしている間に何かは少女を抱きしめ、

「お兄様をこれ以上苦しめてはいけませんよ、それに私なら貴方を見捨てません 」

そうだ、と少女は思い返す。

怖かったのだ。

兄に見捨てられるのを心のどこかで怖がっていて、兄は人間だ、人間とは何か違う私をいつか見捨てる時が来るかもしれない。しかし、この何かは人間ではないようなのは見れば分かるし、少女と同類のようにも見える。

だから少女は自然と、安堵して泣いていた。

ここが私の居場所なのだと。

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