挿話 夢 (1)

魔女は夢を見た。しかもあまりいい夢ではなく、自らの幼少の頃の記憶、少女が真に魔女に染まった記憶。


「ちんたらしてないで、早くしたらどうだい?! 」

ニキビだらけの顔をした老婆の魔女がボロボロな少女に、近くにある煉瓦で出来た大きな釜に、もっと早く薪をくべるように促した。

少女の身はやつれ、痩せ細り、今にも倒れそうだった。

「はい…」

少女は弱々しい声で言うと、魔女はそれがたいそう気に入らなかったのか。

「おっと、手が滑った 」

魔女は少女の右手をつかんで、釜戸の内側に押し付け、

「うああああああああああああああああああああああっ!!! 」

という少女の断末魔が聞こえ、約10秒ぐらい押し付けられ、その暫時が終わった後、少女は跪いて呻き声をあげ、右手を押さえながら、その瞳からは涙がとめどなく溢れている。

その手の平は全体的に赤くただれ、皮膚が白くなっているところですらある。

「ふへへ!あんたがちんたらしてるからだよ! 」

そのような凶行をしておきながら、この魔女はその姿を見て腹抱えて高笑いし、笑すぎて咳が出る始末である。

この少女は思う。


なんで、こんなひどいことをするの?

そうか…こいつは『イタミ』をしらないからこんなひどいことをするんだ。

わからないなら おしえてやる 私の『いたみ』を、おしえてやる

カミサマほんとうにいるのなら、わたしにちからをください。

こんなやつを、ころせるようなちからを。

少女は静かに立ち上がる赤くただれていない左手を、

「いたっ! いたいいたいいたいいたいっ!!!!! 」

釜戸の内側に押し付けていく。

「お前さん、何を? 」

魔女は目の前に起きている不可解な行為を驚愕を露わにしてまじまじと眺めている。

「え、えへへ、気でも狂ったかい?」

と魔女は引き笑いをして、なぜか年少の子供にこの魔女は怯えている。

少女はすぐさま、魔女に攻撃を仕掛けようと、大きく両手を広げて襲いかかる。

「や、やめろ… 」

魔女は怯えて後退りをするが、少女は魔女の首を掴み、

「しねしねしねしねしねしねしねしねしねしね ーー死ねえええええええっ!!!」

と少女は叫ぶ。

少女は叫びながら、肉が焼ける音がし、こんがり焼ける匂いがして、魔女は悶え苦しみ、為すすなく喉を焼かれ、首が焼かれているとなれば頭に送られる血液は全て熱湯だろう。

そして、送られた熱湯によって魔女の頭が風船が割れるように破裂する。

少女の顔が血にまみれ、至る所が血に染まる。

首のない魔女は後ろに倒れ、そして、残されたのは、たった一人の少女のみであった。

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