第15話 底なし穴

「それで? 美味しかった? 」

「義理です 」

「は? 」

「これは彼らが私に作ったもの、そうでしょう? だから、私は食べるべきだと思いました 」

それも本当なのだが、もう一つの理由としては彼らはどんな気持ちでこれを作ったのかが知りたかった。

残念ながら、その気持ちとやらは全く分からなかった。

たぶん、機嫌を直して欲しくてこれを作ったのだろうということは解った。しかし、その時にどんな感情を持ちながら、どんな思いを込めたのか全く分からなかった。

そんなことをしなくても、憤怒は最初から彼らに怒りの感情など抱いていないのに。

「会話が通じないなー、 まあ、いいや、それで? 戦う気になった? 」

何かにそう言われると、憤怒はだらりと腕を下げる。

「何それ? なんのつもり? 」

憤怒はただ黙っていた。

どうやら、自分の怪物とやらは底なし穴にでも落ちたらしい。何もする気になれない。

「戦意喪失って感じかな? つまらないなー もう少し歯ごたえがあると思ったんだけど 」

奴は懐からナイフを取り出し、

「それじゃあー、惨殺ショーの始まり!

始まり! 」

そう言うと奴の手にしたナイフが襲ってきた。

そのあとはもう、地獄だった。

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