第8話 暴食の晩餐

「待ってくだサイヨー! 」

化け物はこちらにやってくる。

仲間たちはみんな殺された。八つ裂きにされ、肩を食いちぎられ、もう散々だ。

あれが魔女? 笑わせるな、あれはもはや獣だ。

「く、来るなああああああああああああ」

礼服の青年はその化け物から必死に逃げようとする。

捕まれば殺される。

それしかもう頭になかった。

後ろを振り向かずただ前を向きながら走り続けているうちに突然、霧に包まれ、気づくと、

「あ…あれ? 」

後ろには化け物などおらず代わりに前から、

「大丈夫!? 」

シスター服の女性がこちらにやってきた。礼服の青年の最愛なる女性だ。

「あれ? お前! なんでこんなところに?! 」

「ごめん、来ちゃった」

「だめだ! 帰れ!ここはお前がいちゃ行けない場所だ! 」

ここには化け物がいる。そんなところに自分の最愛の人を置いていくわけにはいかない。

「嫌だよ! あなたを見捨てられないよ!」

彼女はもちろん抵抗するだろう。

「帰れ!」

すると彼女は、

「本当はいて欲しいくせに…」

と呟くようにしていながらも礼服の青年に聞こえるように言った。

彼は根拠のない不気味さと違和感を感じたが、彼はそのことについて深く考えなかった。

「わ、わかった。ただし、俺と一緒にいろよ」

「うん! 」

彼女は屈託のない笑顔をする。

「どうしてお前来れたんだ? 」

歩きながら彼は質問した。もちろん周りにダガーを用いて警戒しながらだ。

「隊長さんにお願いしたの。そしたら、いいって」

「よく許してもらったな」

「もちろん、最初はダメって言われたけどね、結局オッケーしてもらちゃった」

「たく、隊長は…」

「隊長を攻めてあげないで、隊長だって迷ったのよ」

「まあ、そうだな」

「疲れたな、少しあそこの岩で休むか? 」

「うん」

彼が座ると、シスター服の女性は体をべったりとくっつけるように俺の隣に座ってきた。

「お前、近い」

彼は赤くなる。

「いいじゃない、少しぐらい、本当はそうしてもらいたいんでしょ」

「別に、チゲーシ」

彼はそう言いながら、彼女から視線を逸らすのだが、彼女の胸やら顔やらがくっついてきて、もうヤバイ。

「ねえ、あなた…」

そうしていくうちにだんだん、俺が倒される構図になっていく。

「おま、ちょ…これはまずいって」

俺は赤面しながらも頼りない抵抗をした。

「うふふ、ホントウはしたいんでしょ? 」

彼は気づかなかった。彼は気づきもしないままにその幻想に包まれながら、本来ベッドの上にやることを岩の上で行った。




「ええとデスネ、これは食べられません、

おっと、これは食べられマス」

魔女は手や口を血に染めながら、礼服の青年の腹をこじ開け、無作法にもぐちゃぐちゃにしながら、内臓の食べられる部位と食べられない部位を分けて、食べられる部位を外に投げた。まるで子供が箱の中に入っているおもちゃを手探りで探しているようだった。

そして、彼女は食べられる部位を口に入れ、

「ウーン、ビミ! イイデスネ! イイデスネ! とてもジューシーでいて、コリコリとしてイル! やはり決めてはこの中に入っているソースでショウ! この鉄臭い味がワタシの食欲を唆ル!」

そんな長い食レポをした後に、その青年のすやすや寝ている顔を見て彼女は歪んだ笑顔でこう呟いた。


「どうでスカ? 甘いですカネ? 」

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