第2章 牧番

第36話 牧番という仕事

牧番は、毎日、放牧牛の確認をする仕事。

最初は、確認だけだと思っていたが、牛の無事を確認しなければならない。

怪我や発情、異常がみつかると畜主に連絡。


しばらくすると「べぇべぇ」呼ぶと100頭近くが集まってくれる様になった。

「べぇべぇ」と言っても人に寄って、イントネーションや声の出し方が違う。

僕は、畜主や隣の牧場の牧番の呼び方を参考にし、いろいろ試してみた。

「べ」と「ば」の間が良いようだ。

「べぇべぇ」と言っても一回ではない。

牛たちが集まってくれるまで何度も叫ぶ。喉が枯れるまで。

広い牧野の時は、奥の牛たちが動く様、クルマのクラクションを鳴らし、クルマの中から、「べぇべぇ」と叫び、牛が一頭でも動くとクルマを動かし、また、群れを見つけると、同じ行動を繰り返す。そして、水飲み場に牛たちを集める。

水場でも「べぇべぇ」と叫ぶ。

ある程度集まったら、配合飼料を何箇所かに撒き、更に牛たちを集める。


どうしても言うことを聞いてくれない牛もいるので、その時は、水場を締め

牧野を歩いて確認しに行く。


一度、一頭だけ、みつけられなかった牛がいた。牛は、群れで生活する動物なので、群れや他の牛たちとも離れた時は、危ない。

僕は、最悪の事態を考えながら、藪の中へ潜り、探していると牧野の一番奥の藪の影にいた。

しかし、なんだか様子がおかしい。細い尿をしている。なんか、粘り気があるようだ。その牛は、流産した。

最初に見たのは、破水だった。


初めての経験だった。

母牛が無事だったのは、幸いだったが、毎日、見てきた牛だけに悲しかった。

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