第34話 直売所
「パソコンができる人」が採用基準だった。
仕事は、直売所の店長。売上管理とレジ締めが主な仕事。
しかし、接客もやる。
組合が運営していて、僕を呼んでくれた従兄弟は組合員だった。
給料10万円。バイト並みだ。
しかし、組合長が持っている休業中の宿にタダで住まわせてもらえる様なので了解する。
接客業は、ほとんどやった事がない。
学生の頃の雀荘くらいだ。
まぁ、なんとかなるだろう。
最初は、ぎこちなかったが、だんだん慣れてくると自然に振る舞える様になる。
しかし、感情を抑えきれない時もある。お客さんから「ココ道の駅だよね。なんで弁当が無いの?」と言われたので、僕は「直売所です!道の駅は20分くらいのところにあるのでそちらに行ってください!」
古いバイトのおばちゃんもムカついていたが、そこは抑える様に言われた。
豪雨で主要道路が落ち、迂回路は、山道だった。片側一車線で、山道なのでカーブは多かったが、緩いカーブで綺麗な道だった。観光客は、その山道を二度と通りたくないと言う。
僕は、霧山村の山道を経験していたので不思議だった。
霧山村の山道は、カーブの連続。クルマ一台しか通れない幅、他の車と鉢合わせるとどちらかが交差できるところまでバックしなければならなかった。
それに比べると直線と思えるほどの山道だ。
しかし、価値観は皆違うので、観光客は減り続け、直売所の売り上げは、どんどん下がって行く。他の道の駅なども前年比70%くらいだった。
組合長は「なんで売り上げが下がるんだ!」と言ってくる。
(そんなの分かっているだろう。地元住民なのに主要道路が落ちたのを知らないのかな?)
しかし、そこを柔らかく答えても聞いてくれない。
「売り上げを上げろ」と言われ続ける。
ある日、組合長から「宿を再開するから、他に住むところを探してくれ」
月給10万円じゃ無理だろう。
従兄弟が住むところを探してくれそうだったが、「探してもらわなくても良いですよ。耐えられないので、もう、辞めようと思っています」と伝えると、ぼくが、酷い扱いを受けていたことを知っていたので、「分かった」と言ってくれた。
そして、また、実家に帰る。
僕が辞めた後、バイトは全員辞めたらしい。
またまた、どこかで聞いた話だ。
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