第19話 WEB会社

新しもの好きの僕は、土屋くんの仕事を手伝うことにする。

土屋くんに言われた会社にいくと数台の黒塗りのベンツが止まっていた。

何か嫌な予感がした。


とりあえず、社長面接。

背が高く、カッコ良くて、オシャレだ。モテそうな雰囲気があった。

しかし、少し威圧感がある。

僕の作品集もペラペラとあまり見ていない様子「土屋くんが連れて来た人ならOKだよ」とあっさり採用。


土屋くんが仕事を見せてくれた。

何やら、女の子写真が多い。

そこは、風俗店のWEBサイトや雑誌広告を一手に背負う風俗店の販促会社の様なところだった。

カタギのクライアントはいくつかあったが、それは、表の顔。


社長は営業を兼任していたが、この人は営業力が凄かった。

数十店のサイト物件も持って来ていた。


以前いた従業員は辞めてしまい、土屋くんひとりなっていた。

(そりゃオーバーワークになるわな)

1ヶ月泊まり込み、サイトを作る。ぼくは数回作ったことはあるが、HTMLを理解していなかったので、画像加工担当になる。

元画像は、店長が撮ってきた素人写真なので、バックをぼかし、人物にピントがあっている様にし、カラーバランスを調整する。

リストカットの跡やタトゥーのある女の子は、それを消す。贅肉は削る。

太った女の子は、ぽっちゃりした巨乳の女の子に仕上げる。

一枚なら問題ないが、数枚あると全て同じ雰囲気の写真に仕上げなければならない。


風俗店の写真を信用するものでは無い。


風俗店の仕事をしていると色眼鏡で見られるが、僕たちは本気だった。

女の子のデータベースを作り、それをHTMLに書き出す。


1ヶ月がたった頃、付き合っている彼女から「お別れメール」が届く。


それから、僕は、少しおかしくなる。

ファイルを探していると何を探しているか分からなくなり延々と探す。

グラスを洗っていると何度も洗っている。

いきなりキレる。きっかけも意味もない。

デザイン力が下がり、商店のオヤジがワードで作った様なデザインになる。


土屋くんが「社会勉強のつもりで心療内科でカウンセリング受けてみたら?」

とりあえず、行ってみる。

アンケートを書く様に言われたが、前の彼女の名前以外何も書けない。

手が震えて文字も書けない。


カウンセリングを受けたら、自律神経失調症(うつ病)と診断され、薬を処方してもらう。


事務所に帰り「ただいまー。あんまり効かなかったよ」と言うと

土屋くんは「効いてると思いますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る