第14話 独立

高杉さんから「一緒に独立しよう」と言われていたので、独立することにする。

高杉さんには、あと二人メンバーがいた、ひとりは営業、ひとりはデザイナー。高杉さんは、プログラムも出来るが、デザイナーだ。

バランスが悪い。相当大きな物件がない限り、デザイナーは三人もいらない。

営業、デザイナー、プランナー兼ライターが丁度いいバランスだ。

しかし、よくよく聞いてみるとそのふたりは、プロダクションを作って潰した経験があるようだ。そして、今でも営業はWEBデザイナーを派遣する派遣業もやっているらしい。


僕は、少し考えた。

しかし、僕は、焦っていた。

僕の同級生は、役職が付き、チームを引っ張っていた。管理職になった人も取締役になった人もいた。プロダクションを立ち上げた人もいた。

その時の僕への会社の扱いは、10年近く経っても新入社員並みだ。

DBチームは持っていたが、バイトで構成されていた。

通常の仕事では、流通チラシはFAX校正なので、任せてもらえていたが、その他のカタログやパンフレット、パッケージなどになると、オリエンテーションもプレゼンも参加させてもらえない。上のディレクターの指示を外注さんに伝え、スケジュール管理とチェックが主な仕事。

もう、ダメだ。どんどん置いていかれる。

外注さんが羨ましかった。


なんか不安はあるが、飛び込んだ。

打ち合わせでは高杉さんが「投資家を募って」とか「著作権を取って」とか夢みたいなことを言う。「遊びなら、面白いかも知れないけど、ビジネスの話をしているんですよ」と僕は、言った。

僕らは、高杉さんを外した。


後で考えると高杉さんは、クラウドファンディングのことを言っていたのだろう。時代の先を行き過ぎていて、僕らは理解できなかった。



とりあえず、中心街のマンションに部屋を借り、事務所にした。

MACは自前で持ち込み。この時、僕は、最新機種に目一杯メモリを積み、新調した。そして、机と椅子を購入。

とりあえず、形にはなった。

しかし、仕事が無い。営業の派遣業も派遣社員が辞めてしまい、派遣業の売り上げも無い。僕が前いた会社は「辞めた人には仕事は出さない」主義だそうだ。


そんな時、エーちゃんから連絡が入る。

エーちゃんは、父親から、「店を出してやるから、30になったら帰って来い」と言われていたので、きっちり30歳で帰って来て、焼肉店を作っていた。

「デザイン事務所作ったのなら、店のオープンまでに販促物作ってよ」

WEBサイト、リーフレット、メニュー、チラシ、ポスター、箸袋まで全て作った。それをもうひとりデザイナーと分け合った。


それが、終わると、また、仕事が無い。

僕が、色んな人にお願いして仕事をもってくる。もうひとりのデザイナーと分け合って作る。


それが、延々続く。営業は仕事を持って来ない。

見積書と請求書を作るだけ。


10ヶ月がたった頃、僕は、キレた。

「仕事持って来ない営業が営業か?デザイナーも俺の持ってきた仕事をやって文句ばかり言いやがって、そんななら、オレは、ひとりでやった方がいい」


そして、そのチームを辞めて、フリーランスとなる。


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