第11話 MAC
僕は、デザイン制作会社なのにMACが無い事が腹立たしかった。
総務課に嘘をつかれたことも。
まだ、その頃、印画紙出力のレベルだったが、周りのプロダクションや制作会社は、導入していた。知識や技術を得ていかなければ必ず時代に置いて行かれる。
その危機感が、この会社には無かった。
しかし、まだ、新入社員の僕に何かできる訳ではないので、120万円4年ローンでMACとスキャナーを買った。周りからは、「なんでクルマを買わないの?」と言われたが、僕にはMACが必要だった。
その頃、大学でコンピューター概論を教えていた教授から電話があり、「CG協会を作るから会員になってくれない?」と電話があった。僕は、二つ返事でOKした。それから、会社の寮にMACを持ち込み、チクチクと作品を作り続けた。
僕は、3DCGが好きだった。
大学のグラフィックワークステーション(GWS)で思ったことだが、PCの中にはバーチャルな無限の宇宙が存在している。
その宇宙の中で、制作ができる驚きと喜びがあった。
GWSは、パーソナルリンクスで、メタボールが使えた。
まだ、その頃、メタボールを使えるMACのソフトは無かったが、3Dソフトでオブジェクトを作り、Photoshopで加工するやり方で作品を作り続けていた。
そんなことをしていると本社や他の支社でも話題になる。
「どうやら、地方でMACをやっているやつがいるらしい」と。
僕と同じ様な考えの人は、実は多い様で、そういう人たちが本社に集められる。僕は、一番下だ。リーダーは名古屋の中田さん。
それから、全国的にデジタル化推進が始まる。
とりあえず、本社にMACを導入し、各支社に一台でも良いからMACを導入するのが、最初の目標。
しばらくするとぼくのいる支社にもMACが導入された。それも最新機種だ。
僕は、自分の仕事が終わっても帰らず、深夜や明け方まで、MACに噛り付いた。
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