第5話 雀荘

大学は、付属の推薦なので、デッサンと面接のみ。デッサンは高校2年から頑張ったが、教授陣も顔馴染みなので、面接では「今日の出来は、どう?」「まあまあですね」って感じで、するっと合格。

大学は、今までクラスで「訳のわからない奴」「変人扱い」されていた奴らが集まっていて、居心地が良かったが、それから、バイトと遊びに明け暮れる日々が続く。


短期の年賀状の郵便配達やチラシ配りのバイトなどは、やったことあったが、

長期のバイトは、「雀荘」が初めてだった。

同級生から誘われた。「僕は麻雀できないよ」と言っても「フロアで代打ちする訳じゃないので、それでもいい」と言う。バイトの開始は、18時からだったが、面接で「講義で遅れることもあります」と言ったら店長は、「それでもいい」というので、入ってみる。

そこの雀荘は、大きなところで、30卓くらいある。

普段は、フリーの常連さんが1〜2卓を囲み、あと数卓が埋まるくらい。

しかし、金曜の夜は、満員になる。単純に数えて、120人のお客さん達。サラリーマンが多いが、酒飲みならが打っているので、負けている人は柄が悪い。


夕方から夜中まで働いていたので、給料が15万円くらいになる。その当時の大学生にしては良い方だ。大卒新入社員の初任給並み。


フリーのお客さんの中に運転手付きでやってくるヤクザの人がいた。ポン引きらしい。たまに綺麗なお姉さんを連れてくる。

麻雀は、何時間も打つ、下手したら、夕方から明け方まで打つ人もいる。

そのヤクザの人は、数時間しか打たなかったが、運転手の人は、待合ソファでじっと待っている。たぶん、組の下の方の人だろう。僕らは、その運転手さんにサービスでコーヒーを出す様にした。

するとヤクザの人から次第に気に入られ、出前の寿司を奢ったりしてもらえる様になり、常連さんとも冗談を言い、打ち解けられるようになった。


しかし、夜中に仕事が終わってから遊びに行くので、寝れない日々。

そして、金曜日満員の地獄。

一番奥の卓に行くと注文が飛び交う。ファミレスの様に注文を確認する暇もない。そのうち、聞こえないフリをするようになり、店長から「遅刻が多いから」という理由でクビになる。

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