第6話
***
あの恐怖の日から、一週間が経った。
警察を呼べば大事になる。そう思ったあかりたちが助けを求めたのは、担任の秋津だった。電話を切ってすぐにあかりの家へと駆け付けた秋津は、縛られてもなお笑顔を浮かべたままの倉科の姿に頭を抱えていた。
「ホント、解決してよかった」
「うん……。でも、ごめんね。倉科のやつがあんなことするなんて……」
「榊君が謝ることじゃないよ」
「でも、本当に警察に言わなくてよかったの?」
「……うん」
秋津が連絡をしてくれたのか、倉科の両親が身柄を引き取りに来て、あかりに泣きながら頭を下げた。そして、倉科の頭を下げさせながら『遠くの街に引っ越してもう二度とあかりの前に姿を見せないから、どうか警察には言わないでくれ』と言う倉科の両親に、あかりは頷くことしかできなかった。
「あかりがいいなら、いいんだけど……」
「うん……。二人には心配掛けちゃってごめんね」
悲しそうに微笑むあかりに、美和と榊が首を振る。窓から教室に夕日が差し込み、どことなく寂しい空気が流れ始める。
そろそろ帰ろうか、とあかりたちが立ち上がった瞬間、教室のドアが開いた。そこには担任の秋津の姿があった。
「ああ、遠藤。まだ残っててよかった。この間の倉科の件でご両親に説明したいから一緒に家まで行かせてくれ」
「あ、はい。それじゃあ、先に帰るね」
「気をつけてね」
「また明日」
美和と榊に手を振ると、あかりは秋津に連れられるようにして教室を出た。
あかりの姿を見送ったあと、榊は思い出したかのように言った。
「今日、帰ってくるんだっけ? 遠藤さんのご両親」
「そう。本当はもっと早く帰ってきたかったみたいなんだけど、仕事との兼ね合いでね。うちの親に何度も電話を掛けてきてたわ。申し訳ないけれどよろしく頼むって」
「両親同士も仲いいんだ?」
「母親同士が同級生よ」
話が長くなりそうだと思い、美和は近くにあった席に座る。教卓にもたれかかるようにしていた榊も、美和の一つ前の席に座った。
「それじゃあ、うちと似てるね。僕と倉科は父親同士が同級生でさ。昔からよく遊んでたんだ。あの事件のあった前の日も泊まりに来てたから、その次の日にあんなことになってビックリしたみたいで……」
「――ねえ、ちょっと待って」
「え?」
「今、なんて言った? 事件の前の日に倉科があんたの家にいたって……?」
「そうだよ? 学校帰りにそのままうちの家に来て、それで――」
榊の言葉はもう美和の耳には入っていなかった。
榊の言うことが正しければ、あの事件の前日、倉科はずっと榊の家にいたと言うことになる。
それじゃあ……。
「あの日、倉科があんたと一緒にいたなら……。あかりの家までついて行ってチャイムを押したのは、一体誰なの……?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます