第4話
***
美和が二年二組の教室のドアを開けると、そこには誰もいなかった。生徒会室の電気が消えていたので、先に教室に戻ったのだと思っていたのだけれど、そうではなかったのだろうか。
そんなことを考えていると、後ろから「おかしいなー」と呟く榊の声が聞こえた。
「何がおかしいの?」
「教室で待ってるって言った倉科の姿がないんだ」
「倉科も? あかりもいないのよ」
美和はスマホを操作すると、あかりへと電話を掛ける。けれど、コール音は鳴ることなく『電源が入っていない、もしくは電波の届かないところにあるためかかりません』というアナウンスが聞こえてくるだけだった。
「遠藤さんも? ……そういえばさ、今回のことって警察にはもう言ったの?」
「まだよ。言おうと思ったんだけど、倉科が言っても無駄だって」
「倉科が?」
美和の言葉に、榊は怪訝そうな表情を浮かべた。そんな榊を不思議に思いながら、美和は朝の出来事を話して聞かせた。
「ええ。あいつのお姉さんがストーカー被害に遭ったとき、警察は何もしてくれなかったから、どうせ今回も同じだろうって」
「え……? 嘘でしょ?」
「嘘じゃないわよ。倉科本人が言ってたんだから。小声で言ってたからあんたには聞こえなかった――」
「そんなのおかしいよ!」
美和の声を遮ると、榊は首を振った。その表情は青ざめていた。
「な、何がおかしいのよ?」
「だって! だって、倉科には!! お姉さんなんて、いないんだ!」
「どういう、こと……?」
榊の言葉に、美和は頭の中が冷たくなるのを感じた。
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