第十七話
「写真は本人が既に撮影していたものを使ったんでしょうが、文章は別人が書き込んでいます」
指でスクロールして映し出した記事をいくつか素早くスクリーンショットで保存しながら御伽が断言した。そして、根拠となるものを画像にして金森の目の前に見せる。
「初見じゃ分かりにくいっすけど、これ、今までの記事と最後のやつとじゃ漢字変換が違うんすよ」
彼女が説明した通り、よく目を向けると変換の仕方が異なる箇所があった。
例えば「聞く」と「聴く」だったり、「見る」と「観る」だったり、単純だが人によって好みの分かれる漢字だ。どちらを使っても問題ない場合であっても同訓異字の変換に拘る人間は一定数いる。
月島君枝は場面によって変えるタイプであるようで、会話の時は「聞く」を使うが、音楽などには「聴く」を好む傾向にあった。映画のことを書き込んでいる際にも「観る」を使用している。他にも使い分けている漢字は多い。
しかし、最後の更新ではどれも一般的なものを同一に使用しており、場面による変化は見られなかった。
犯人はそこまで気に掛ける性格ではなかったか、或いは最初から使い分けていたことを知らなかった可能性がある。通常であればそこまで注目する者もいないだろうから、たとえどちらが理由だとしても問題はなかった。
些細な違和感すら瞬時に察知してしまう御伽のような目敏い人間がいなければ、だが。
「因みに、彼女のスマホは指紋認証機能を付けています。ロックを解除するために遺体の指を押さえつけた際に指紋が付着したんでしょう」
確かにそうなると不自然に指紋が残っていた理由にもなる。
「しかし、よくもまあ、こんな細けぇ違いに気付いたな。というか
呆れとも感心ともつかない様子で金森が息を吐き出した。御伽はそれを奇妙そうに眺める。
「何言ってるんすか。事件現場が月島グループの社長宅だと知らされた時点で、ある程度は前もって調べますよね」
「え?」驚きのあまり金森は動きを止める。
「自分がSNSをチェックしたのは現場に向かう前っす」
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