第十六話
これで事件性があると証明されたことになる。刑事としての闘志に火が灯ったのか、金森は瞳に熱いものを滾らせた。
「犯人が塗り潰したってことか」
「そう考えるのが妥当っすね。自分に結び付ける証拠がマニキュアに残されてしまったんでしょう」
金森が「ダイイング・メッセージだな」と得意げな顔を向けた。
「いや、もっと単純っす」
さらっと否定した御伽は、またもや安藤に声を掛けた。すると、再びタブレットを翳した安藤が画像を見せてくる。
そこには、爪の形を立体的に写し取ったスキャン画像があった。
彼が指で軽く操作すると、濃い赤色をしていた爪に模様が浮き出てくる。タイムレゾリューションを使った透視技術を駆使して再現したものだ。
透視された模様と一緒に映っているものは、くっきりとした指紋だった。
「既に月島君枝とは不一致との結果が出ています。彼女の指紋でないなら、犯人のものと考えるべきでしょうね」
「確かにこれは決定的な証拠になるな」
金森は呆けたように呟いた。
「だが、どうやって指紋が付いたんだ? 乾燥してるマニキュアの上に、こんなにくっきり痕は残らんだろ?」
「そんなの乾き切る前に触れたってことでしょう」
つまり、塗ったマニキュアが乾燥するまでの僅かな時間に犯人が月島君枝の傍にいたということになる。
遺体や室内に揉み合った形跡はなかったので、何かの拍子に触れてしまい、指紋を残したのだろう。
「除光液で消さなかったのは、単純にそこまで時間がなかったか、焦っていて気が回らなかったんだと思います」
納得しかけた金森だが、不意に首を傾げた。何か引っ掛かるものがあったようだ。
「待て。さっきの写真はどうなるんだ? お前の言う通りなら、死んでからブログを更新したってことになるぞ」
「その通りっす」
御伽は少しだけ口角を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます