第七話

 一昔前なら問題ないが、昨今では“熱血”なんてものは失笑されるし、恐喝だ暴力だと責め立てられる。金森のようなタイプには生きづらい時代だろう。


「持ち場っていってもここで自分に出来ることはないっすよ。あ、土屋警部にも許可は貰ってるんで」

「警部はお前に甘過ぎないか?」

 金森は不満げに言うが、御伽に答えられることはない。融通を利かせて貰える理由など彼女にも知らないからだ。

「まあ、好きにさせて貰えるんなら何でもいいっす。それはともかく、ちょっと出かけてきます」

「あ? 出かけるって何処に」

「近所の人から面白い話が聞けたんで、事情聴取に」

 面白い、とは言っているが、彼女の目はいつも通りに凪いでおり、興味を抱いているようには見えなかった。

 金森が彼女を苦手とする一番の原因だ。淡々としていて、何を考えているのか分からない御伽の存在は、彼にとって随分と不気味に感じるらしい。


「俺も行く」

 しかし、関わらないという選択肢は彼に存在しないようだ。


「ついて来るんすか」

「指導役としてお前の面倒を任されてるんだ。当然だろ」

 金森がしつこいくらい御伽に絡むのは指導を任されている立場であるというのが最たる理由だ。

 苦手だというなら放っておけばいいのに、責任感が強いのか御伽に関わるのを決して止めようとしない。御伽は面倒臭そうに溜息を吐いた。

「何をしでかすか分からんお前を放っておく訳にはいかねぇからな」

「余計なお世話っす」

 きっぱりと言った御伽に「はあ!?」と金森が声を上げる。だが、彼女から温度のない視線が向けられて、金森は僅かに怯んだ。


「仕方ないんで連れていきますけど、大人しくしといて下さいね」

「おい、そりゃどういう意味だ!?」


「あーもう。それっすよ、それ」御伽は耳を塞ぎながら唸った。

「煩いんで止めて下さい。先方にも迷惑なんで」

 自身の声が大きいことに自覚はあったのだろう。金森はぐっと堪えるように口を噤んだ。

「がなり声とか本気で勘弁して下さいね。あくまでも話を聞きに行くだけなんすから。金森さんがいない方が良かった、なんて後で言わせないで下さいよ」

 御伽の容赦ない言葉に、彼は眉を吊り上げつつも反論はしなかった。

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