第五話
「あの人、仕事に関しては遣り手なのよね。性格は気に入らないけど、ご主人が残した小さな商社を一代で巨大な企業グループにまで伸し上げたくらいだし」
「テレビでもよく取り上げられてますね」
「そうなのよ。で、まあ、これは想像でしかないんだけど、会社を急激に発展させるなんて正攻法じゃ無理じゃない? ちょっと口には出せない悪どいこともやってるんじゃないかって噂なの」
「ご近所でも好かれるようなタイプではなかったし、周りから恨まれていても驚かないわ。それに……」
彼女達は示し合わせたように視線を交わし、意味深に頷いた。どうやらここが一番の根拠といえる部分のようだ。
「それに?」
御伽が訝しむように問うと、一人が「ここだけの話にして下さいね」と念を押して話し出した。流石に周囲の目を憚る内容のようで声を潜めている。
「彼女、ご主人の連れ子だった
「最初は良妻賢母のように振る舞っていたのに、ご主人が亡くなるとすぐに手の平を返して傍若無人になってね」
「彼女にも娘が二人いるんだけど、自分の娘達には贅沢をさせて、美紀ちゃんには家政婦のように仕事を押し付けて、召使みたいに扱っていたようよ」
「うちの子が同級生で、学校でも姉二人に嫌がらせを受けていたのを見たことがあるって……」
まるで現代版の『シンデレラ』だ。
月島君枝の立場上、こんなことが外に漏れれば大変なスキャンダルになる。日頃からハイエナのように特ダネを狙っているマスコミのいい餌食だ。
きっと世間体を考えて気を付けていたのだろうが、耳聡いご婦人達には筒抜けだったといえる。
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